連載

「お茶を食べる」文化で健康の環を広げる 

地域の美と健康が動き出した【第71回】(愛知県)

お茶っ葉を「食べた」ことはあるだろうか?お茶どころ愛知県西尾市で50年以上にわたって地域に愛される「日本料理 魚寅」は、「碾茶(てんちゃ)めし」発祥のお店。碾茶は抹茶の原料となる茶葉のことで、身体に良い成分がたくさん含まれている。「お茶で一服する」という言葉は、お茶が「身体に良い薬」として服用されていたことが由来になっているそうだ。

食を通じて健康、幸せの循環をつくりたい、と魚寅が初めて「西尾の碾茶めし」を発売したのは30年以上前のこと。その後、西尾一色産のうなぎと西尾の碾茶、さらには地元産の鋳物の釜と西尾の特産を組み合わせた「茶めしうな釜」を開発し、現在では店1番の人気メニューとなっている。

自宅で楽しめる茶めしうな釜セット

最近では、より身近に「食べるお茶」を味わってもらうため、自宅用の「茶めしうな釜セット」を発売した。炊飯器で調理でき、こだわりの味を手軽に楽しめるとあって売れ行きは上々。コロナ禍の巣ごもり需要にも後押しされたが、「地元以外の人にも広く茶めしの魅力を知ってもらう」という点に課題を感じていた。そこで、西尾商工会議所や中小機構中部本部が主催する「商品力強化プロジェクト」に参加し、バイヤーからの意見を取り入れ商品の改良を行った。丁寧に作り上げられた茶めしうな釜の味は好評。一方で、現代の家族構成・生活スタイルに合わせた小さめサイズのセットがほしい、という声を受け、3~4人前のセットから1~2人前のセットに改良。現在、発売に向けて準備を進めている。

大将の宮地重幸が笑顔で迎える

いま食べているものが将来の健康をつくる。茶めしうな釜を通じて「お茶を美味しく食べる」文化、ひいては健康の環を広めていきたい。「魚寅」2代目大将の宮地重幸は、「『食べ方』を提案するのが料理人の使命」と話す。お茶どころ西尾で生まれ育った料理人として、これからも「お茶の食べ方」を提案していきたい。それが健康づくりの一助となることを信じ、今日も厨房に立つ。

(独)中小機構中部本部主任  中国由理亜

地域・連携支援課で中小・小規模事業者の事業継続力強化や事業承継の円滑化支援、地域支援機関との連携強化に携わる。

 

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