コンシェルジュがサービスを横断的に案内
東京都・銀座 TRINITY RAD GINZA
4月19日、トータルビューティサロン「TRINITY RAD GINZA(トリニティ ラッド ギンザ)」がオープンした。高い技術力を持つヘア、ネイル、アイ(目元)の専門店が、連携しながら顧客の求める美容スタイルを実現させる。独自手法で急拡大するトータルビューティサロンの新しいビジネスモデルを取材した。
のれん分けで従業員のモチベーションアップ
トリニティ ラッド ギンザを運営するのは、関西を中心にヘアサロンを直営20店、フランチャイズ(FC)16店展開する㈱モードケイズ。
ヘアサロン業界には、スタッフの独立志向が強く、技術・知識レベルの高い幹部ほど店に残らないという共通の悩みがある。それに対して、同社は幹部教育に力を入れ、独立を支援する“のれん分け”型のFC方式を1998年から始めた。現在、中価格帯の「MODE K’S」、高価格帯の「RAD」ブランドを展開する。トリニティは、このRADにネイルサロン「ディーバ」、眉毛、まつ毛を施術するアイサロン「ビューティジーン」が併設されたトータルビューティサロンの新しいブランドだ。
同社は、今年から関東に進出し、銀座店はMODE K’S八王子店に次いで2店目。約60坪の店内は、約25坪をヘアサロンが占め、8つのセット面に、ヘアとネイルを同時提供できる席を3つ備える。ネイル(5席)とアイ(3席)は約15坪ずつ。スタッフはヘア部門が12名で、ほかにコンシェルジュが2名、レセプション(受付)が2名の体制となる。
同店の運営方法は、ヘア、ネイル、アイサロンにそれぞれ代表者を置き、FCオーナーが統括する。美容サービスとして互いに切磋琢磨しながら、連帯して店舗全体の売り上げ向上を図っている。そのためには情報の共有化が重要となるため、店舗や職種、FCオーナーごとに会議を頻繁に行っている。
目指すトータルビューティとは
同社が、最初にネイルを導入したのは、十数年前。当時は、多くの美容室がこぞってネイルサービスを導入し始めたが、単にネイリストを雇うだけでは、売上はいっこうに上がらなかった。創業時からの社員で、銀座店FCオーナーの中山政博氏は「ネイルの月間売上が、たった10万円という時もあった。ただ、髪の毛を切りに来た客に、ネイルを案内するだけでは苦戦して当然」と振り返る。
そこでネイルサービスを店舗内店舗として自立させる必要性を感じ、専門ネイルサロン「ディーバ」と提携。ヘアサロン内に出店したところ、売上が飛躍的に上がった。「単なる付帯サービスではなく、対等な立場に置くことが各セクションの成長に繋がった」(中山氏)と実感した。このモデルを他の美容サービスにも応用し、アイサロンのほか、エステティックサロンを併設している店舗もある。
トータルビューティ化によるメリットは、同時施術による客単価と時間効率の向上。客にとっても複数の店舗を訪れる必要がなくなる。ただ、提供するサービスは高いレベルであることが条件になる。専業化された技術者が協力し合い、客が求める美容スタイルを提供するのが理想だ。
それを実現させるために重要な役割を果たすのが、コンシェルジュの存在。プロフェッショナルを束ね、サービスを横断的に案内する。このポジションは、顧客とのコミュニケーション、スタッフ間の連携まで受け持ち、サービスの効果的な提案方法やタイミングについて、常に各店舗とミーティングを重ねている。また、スタイリストを紹介する際は、希望するヘアスタイルだけでなく、趣味や話し方にも気を使う。
5年で50店舗展開へ
同社は、高いレベルのサービス提供には、スタッフの高いモチベーションが必須として、社歴や年齢に関係なく、スタッフの能力・技術が正当に評価されるよう独自のランクアップ制度を設けた。「ヘアサロンも長年勤務すれば、キャリアを描けるようにしたかった」と中山氏は話す。
この制度では、スタイリスト、コンシェルジュ、ネイリストを専門性を持ったプロフェッショナルと位置付けている。社内資格に合格すると、各職種でステップアップが可能で、最終的にはディレクターとなり、店舗の運営を任される。実際にコンシェルジュ出身の店長も活躍しているという。
銀座店の月商目標は2000万円。ヘアが1000万、ネイルとアイが500万円という内訳。今後は、フェイシャル、デコルテまでの施術を行うスパメニューを拡充していく方針だ。「関東はマーケットが大きく激戦区だが、トータルビューティのニーズは高く、差別化できる店舗を出せれば勝負になる。シニア層には、髪のボリュームダウンなど、エイジングによる悩みに応じたスタイルが提案できる。手応えは感じている」(中山氏)とし、今後5年間で関東に50店舗の出店を目指している。