肌を正しく知ることが、アンチエイジングの近道
吉木氏は10年前より、銀座の「よしき皮膚科クリニック銀座」にて診療を行っている。患者の中心は20~30代女性。肌の専門医として女性誌にも頻繁に登場し、スキンケア法に関する著書も多い。体内からのケアの指導も行っている吉木氏に、勘違いしやすい肌の知識やスキンケアの常識について伺った。
クレンジングと洗顔の勘違い
クリニックの患者さんは20~30代の女性中心ですが、肌の悩みに対するケアとして、共通した勘違いがかなりあると感じています。クレンジングや洗顔、保湿などについて正しい肌対策を知ることが重要です。
例えば、肌が乾燥している人の中には保湿よりもクレンジングが合っていないケースが多く、そのような方は保湿を積極的に行うよりもクレンジングを変えると良いと思います。
まずクレンジングですが、全体的にメイク落としやクレンジングを強く行う傾向があり、強くこする事で毛穴掃除ができると思っている人が非常に多いようです。 強い洗顔で表面をこすっても、肌の奥の汚れは取れませんし、メイク汚れが皮膚に沈着すると考えは間違いです。メイクの色素は粒子が大きいため肌には浸透せず、吸収されることはないのです。
反対に強いクレンジングは様々な弊害をもたらし、一つに炎症性色素沈着と呼ばれるものがあって、強くこすることによって起こる慢性な炎症が原因です。周囲の皮膚も乾燥して痛み、ひどい場合は傷やニキビ、湿疹ができることもあります。
一方、洗顔は、クレンジングと逆に弱い人が多いようです。これも誤解なのですが皮脂を取りすぎると乾燥するということは医学的には間違っています。皮脂は保湿にあまり重要ではありません。
肌の保湿の仕組みとは
「保湿」は「皮脂」、「天然保湿因子(NMF)」「セラミド」の3因子が働きあって肌の水分を守っています。肌の水分のうち80%以上はセラミド、16~17%はNMF(天然保湿因子)が守っています。皮脂の果たす役割は2~3%と非常に小さく、水分を守る力はあまりありません。セラミドが一番重要で肌の水分を守る鍵といえます。
セラミドとは角質細胞間脂質の一種で、細胞と細胞の間にはセラミドと水が7~8層くらいのラメラ構造と呼ばれるミルフィーユ状の層を作っています。年をとると乾燥して水気が無くなるのは、セラミドが減ってくるためです。
皮脂は思春期から増加し、25歳~35歳の働く女性はオイリードライゾーンといわれ、水分が減っているのに油分が多くトラブルが起こりやすい肌の状態です。 また乾燥している肌は、紫外線や有害物質が入りやすいので、バリアアップのためにも保湿は重要です。
シワ、たるみ、毛穴の原因はコラーゲン線維の老化
乾燥するとシワになると思っている方がいますが、乾燥したからシワになるわけではありません。シワはコラーゲン線維の老化によって弾力が低下し、顔の表情によって刻まれたところが硬く変質して戻らなくなる状態です。
実はシワもたるみも毛穴の開きもコラーゲンが緩むことで起こります。
真皮の70%はコラーゲンでできており、たんぱく質の線維ネットワークが弾力を保っていますが、年齢と共にもろくなって緩んできます。 これによって周囲の毛穴も広がって目立つようになり、表皮も老化とともに落ち窪んできます。シワとたるみと毛穴の開きという女性の悩みは、それぞれの対策用の化粧品が売られていますが、医学的に見ると同じ原因です。
シミと美白の関係
活性酸素や紫外線が肌に悪い影響を与えることはかなり一般的に知られています。活性酸素や紫外線はコラーゲンにダメージを与えて傷付けます。さらに紫外線はシミを作ります。老人性色素斑と呼ばれる一般的なシミは紫外線によってメラニン細胞が活性化し、メラニンを作りっぱなしの状態のことです。
また、シミ対策として美白の化粧品がよく使われます。美白の化粧品を漂白剤のように思っている人が多いと思いますが、これはメラニンの生成を抑制するものです。美容皮膚科では美白成分としてレチノール(ビタミンA誘導体)とビタミンC誘導体がよく使われます。レチノールは脂溶性成分のため肌への浸透が良いとされています。油性と水性では油性の方が浸透しやすいため、ビタミンC誘導体はビタミンCに油性の性質を持たせているものです。
アンチエイジングとしては、ビタミンA、C、Eなどの抗酸化成分が重要です。他にも口から摂るものではポリフェノール、カテキン、リコピンなどがあります。
クリニックでのアンチエイジングの有効な手段としてはケミカルピーリングがあります。人は加齢とともにターンオーバーが遅くなりますが、角質層をとってあげることでターンオーバーが活性化し真皮にも良い影響があります。これに正しい洗顔や保湿を行い、美容液をプラスすればトータルのアンチエイジングになるでしょう。