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「Jウエルネス」の 積極的な展開に期待(グローバルウエルネスサミット会長兼CEO スージー・エリス氏)

〈インタビュー〉グローバルウエルネスサミット会長兼CEO、 グローバルウエルネスインスティテュート会長兼CEO  スージー・エリス氏

昨年10月にシンガポールで開催された「グローバル ウエルネス サミット2019」で、「スポーツ、アクティブレクリエーション」といった「身体活動(PHYSICAL ACTIVITY)」の市場について、初めての調査報告が発表された。現在市場規模は8,280億ドル(約90兆円)の大きな市場に成長しており、しかも「身体活動」は「幸福感」にも大きな影響があるとした。同サミットのCEOスージー・エリス氏に、話を聞いた。

「身体活動」への参加と「幸福度」は相関すると?

8,280 億ドルという世界の「身体活動」市場に関する2019 年の調査報告の後、私たちは小さな実験をしたいと考えました。その調査の中で身体活動への参加率が高い国と2019 年の世界の幸福度レポートで幸せな国とを比較してみてはどうかと。すると14 か国が、両方のランキングのトップ20 にはいっていて、しかも、ノルウェー、アイスランド、スウェーデン、フィンランド、デンマークなどの北欧諸国がすべて、最も幸せで最も身体的に活発なトップ10 にランクされていたのです。
因みに上位20 のリストのうちの14 ケ国とは、オーストラリア、ノルウェー、ニュージーランド、アイスランド、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、スイス、ルクセンブルク、オランダ、アイルランド、イスラエル、ベルギー、米国でした。
これまでにもスポーツなどの身体活動が、気分や幸福感に良い影響を与えることを示す医学的なエビデンスは数多くあり
ますが、それを裏付ける結果となりました。
「身体活動」と「気分」との研究事例として、中年期のフィットネスのうつ病に対する改善研究や、運動がうつ病の発症を防ぐことを示す研究も知られています。
フィットネス、スポーツ&レジャー、機器、用具用品、ウエア等を含む「身体活動」の市場規模は、さらに2023 年に1.1 兆ドル(約120 兆円)に拡大すると予測しています。

「メンタル」分野のウエルネス市場について?

世界のウエルネス市場では、瞑想、ヨガや、ストレス軽減アプリの急増、または新しい遠隔医療プラットフォームの提供など、メンタル分野のウエルネスに関する新たなアプローチが活発です。これは、世界的に、精神的健康、うつ病、不安、自殺、孤独、様々な依存症の危機があるためです。
例えば、英国は、67%の人が5 年前よりもストレスを感じているといいます。米国では2013 年以降33%増加していて(ミレニアル世代では47%増加)、中国でも成人の40%が毎日多くのストレスを体感していると報告されています。例えば、「瞑想」はアメリカで最も急成長している健康トレンドで、瞑想者の数は2012 年から2017 年の間に3 倍に膨れ上がっています(CDC ※ 2)。現在、約1,500 の瞑想やマインドフルネスのアプリも登場しています。 我々の今回の調査では、ストレスや不眠に対しての、ヨガ、ピラティス、太極拳、気功、ストレッチといったスローでマインドフルな運動の需要が増加していることを示しています。世界の人口の4%が、こういった何らかのマインドフルムーブメントに定期的に参加しています。290 億ドルのその市場は2023 年には520 億ドル規模になると見込まれています。ヨガ
は世界に1 億6500 万人の愛好家がいて市場規模は169 億ドル、太極拳や気功も54 億ドルの市場となっています。メンタルウエルネスは、ほとんどの国々で大きな市場になってきていると言えます。

日本のウエルネスへの期待は?

実は、日本のウエルネスツーリズム市場は世界で5 番目、アジアでは2 番目にランクされる大きな市場です。そして市場の規模は2015 年から2017 年にかけて198 億ドルから225 億ドルと緩やかですが確実な成長を続けています。
「日本のウエルネス」を考えたとき、今後ウエルネスツーリズムに活用すべき素晴らしい資源が沢山あります。まずは「温泉」。世界の温泉施設数の3 分の2 近くを占め、年間売上は128 億ドルとされています。旅行者は皆、素朴で且つ本格的なアジア特有のウエルネス体験を望んでいて、日本の旅館や温泉文化は、その贅沢な選択肢となっています。他にも、多くの伝統的なウエルネスへのアプローチがあります。禅、森林浴など、どれもユニークで精神性が豊かで健康的なアプローチです。
次に、注目のコンテンツは「美容」です。「J-Beauty」は、その技術力とナチュラルなアプローチで、今日のトレンドとうまく調和していると言えます。J-Beauty は米国で2018 年1 月〜9 月に19%売上が増加したという報告もあります(NPD グループ※ 3)。
そして、何より、「Age-Tech」。いま正に先進国の中でも最初に急激な高齢化を経験している日本は、世界の「長寿社会の経済」において、ある意味大きなチャンスを有しているとも言えます。高齢社会をサポートする製品や技術、ソリューションの先駆者となれるでしょう。
これらはすべて日本のウエルネスです。世界のウエルネストレンドの中には、日本発祥も多く、世界は「長寿の国・日本」に注目しています。2020 年のオリンピック・パラリンピックの際には世界中の目は日本に向けられます。伝統の健康習慣も最新の科学やテクノロジーも、「J ウエルネス」として世界の人に向けて積極的にプロモーションしていくことを期待しています。

※1G W I GLOBAL WELLNESS INSTITUTE  ※2CDC  米疾病対策センター 保健社会福祉省(ジョージア州)所轄の感染症対策の総合研究所  ※3NPDグループ  世界23か国で消費者パネル調査、小売店パネル調査を行っている

Susie Ellis(スージー・エリス)
カリフォルニア大学ロサンゼルス校でMBAを取得し、International Spa Association2012Visionary Awardを受賞。ローザンヌホテルスクールの国際諮問委員会メンバー、カリフォルニア大学アーバイン校スパ&ホスピタリティ管理プログラムのスパアドバイザリーボードのメンバーなどを兼任する。Spafinder Wellness、Inc.®社長。

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