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‟女性の健康”の司令塔機能を担う「女性の健康総合センター」オープン

‟女性の健康”に関する司令塔機能を担う「女性の健康総合センター」が1日、国立成育医療研究センター内に開設され、同日開所式が行われた。
「女性の健康総合センター」は、女性の健康や疾患について、ライフコースごとに多面的・包括的な分析を加え、病態の解明・治療・予防に向けた研究と、性差医学・医療を推進を目的としている。日本独自の視点から、性差を意識した臨床・研究を進め、エビデンスの構築に努めるとともに、国際的にその成果を発表し、諸外国との連携も目指す。センター長には、元福島県立医科大学附属病院性差医療センター教授の小宮ひろみ氏が就任した。

同センターでは、5つの取り組みを掲げており、①「女性の健康に関するデータの構築」では、女性の健康に関するデータの整理及びデータの可視化や、クリーニング、統合IDの付与、データ提供窓口などの機能を一元化に取り組む。➁「女性のライフコースを踏まえた基礎研究・臨床研究の積極的推進」では、多岐にわたる女性の健康課題について、医学的な視点だけではなく社会学や経済学など多様なアプローチで研究を推進し、研究成果の社会実装化を推進するため、オープンイノベーションセンターの設立及び民間企業との協働も行っていく。➂「情報収集・発信、人材育成、政策提言」では、女性の健康総合センターで創出されたエビデンスを広く発信するだけでなく、エビデンスを生かして標準化した教育プログラムや教育コンテンツの開発、人材育成にも注力する。また、➃「女性の体とこころのケア」では、妊娠の希望の有無に関わらず、将来のライフプランを考え、日々の生活や健康と向き合うことで将来の健康に繋げる「プレコンセプションケア」の考えを全国に浸透させていくための取り組みや、相談・健診・カウンセリングを実施。また、妊娠と薬情報センターでは、これまで行ってきた相談業務の拡充、医療従事者への教育研修など、一般も含めた情報発信を行い、さらには製薬企業との共同研究も検討している。➄「女性に特化した診療体制の拡充」では、女性に対して幅広い診療を提供する「女性総合診療センター」を成育医療研究センターの院内に立ち上げ、女性内科、女性外科/婦人科、不妊診療科、女性精神科、女性歯科の5つの診療科で構成し、互いに連携し、女性に対して総合的な診療を提供していく。

小宮センター長は「センターでは、ライフステージと性差に着目して女性の健康を推進する。ライフステージは、思春期、性成熟期、更年期、老年期と区分されているが、各時期でエストロゲンなどの性ホルモンの分泌は劇的に変化する。そのような生理的変化の中で、社会・環境因子の影響を受けやすく、さらに妊娠・出産・産後の不調など課題を抱えることもある。一方、性差を形成する要因には性染色体、性ホルモン、内外性器、社会・文化的要因(ジェンダー)があります。これまで、男女とも罹患する疾患や病態において、症状、経過、治療法、予防法について性差を考慮した医学・医療はほとんどなされてきませんでした。男性から得られた研究結果が、そのまま女性にあてはまめられていたといっても過言ではないと思います。すべての細胞には性(XX, XY)があります。性ホルモンは生殖器官のみならず、全身の器官に作用します。また、ジェンダーの差異も明らかです。遺伝子、性ホルモン、ジェンダーの性差に着目した研究・医療は、新たな診断、治療法、予防法などの開発に貢献し、すべての人の健康を推進することが期待されます。

 

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