美と健康の仕掛け人に聞く
株式会社カタログハウス 商品開発プロデューサー 吉川 美樹氏
㈱カタログハウスは、優れた生活商品を勧めるカタログ誌「通販生活」のコスメ版「Slowage(スロワージュ)」を3年前に創刊した。同誌は、非石油系処方にこだわったオンリーワン化粧品をコンセプトに商品を厳選。自社化粧品は53点リリースした。開発を手掛け、同誌責任者でもある吉川美樹氏に、「売れる化粧品開発」について話を聞いた。
異業種の化粧品参入について
異業種からの参入は増えていますが、売るのは容易ではありません。多くの参入企業は、新成分や新技術を看板にして製品を投入しますが、消費者にはそれらの違いが伝わっていません。チラシ、サンプル、メルマガなど多くの化粧品情報の中から選んでもらうためには、「これだっ!」と思わせる確固たるプロフィールが必要で、その個性がそのブランドの立ち位置になります。
一旦、使用して頂いてからは効果と見合った価格で心をわし掴みにします。化粧品は使い続けるものです。それがビジネス上の旨味であり、見限られると二度と振り向いてもらえない難しさでもあります。使用して頂いている間に企業姿勢や誠意をどれだけ示せるかが肝心です。
化粧品を作る時、多くの参入企業は受託メーカーに頼ります。そのこと自体は間違いではありませんし、実力のある受託メーカーなら期待を上回るアドバイスをくれるでしょう。しかし、消費者ではなく依頼主の顔を見ながら作ってしまうケースもあるようです。それでは売れる化粧品が出来るはずはありません。私たちは、売れる商品のコンセプトを自分たちで発案し売れる方程式を組み立ててから受託メーカーに依頼しています。
私たちの化粧品コンセプトは、「唯一無二」、「オンリーワン」、そして「ピカイチ」であること。同じジャンルで市場に決してないものに、こだわっています。そして長期戦で戦いぬける体力のある商品の開発を目指しています。
化粧品開発のポイントは
私は、商品開発は空想から始まると考えています。「あのレベルまで作り込まないとピカイチになれない」、「これだけでは来年に追い付かれてしまう」、「ここまでできれば3年は売れる」などと、常に想像を巡らせています。取引先との会話の中や、拡大しているジャンルの売り場、人気のテクスチャなど開発のヒントはゴロゴロしています。気になる情報は日常生活でも吸収しています。癖ですね。中でも「売り場」は一番重要視しています。今売れている化粧品売り場の風景そのものが価値なので、そのまま記憶するようにしています。
そして、商品開発する時は、必ず仮想の敵を見つけなければいけません。市場の分析ができるし、追随できない要素も割り出せるからです。例えばセラミドは知られているし、セラミドを際立たせたコスメを作れば売れそうだ。では、敵はどこだ。どの会社の原料を採用しているのか。海外ではどうか。等々、徹底的に調べればよいのです。世の中にどんな化粧品が出ているか良く知ることです。
また、開発担当者は、とかく何種類もの成分を配合したくなりますが、買う側は20も30も成分を説明されても理解しきれません。逆に1つか2つに絞られている方が記憶に残ります。ポイントは足し過ぎず、むしろ引いて引いてシンプルにすることです。
ヒットの条件を3つあげると
「分かり易い効果説明」、「オンリーワン処方」、「適正な価格」でしょうか。
化粧品は、情熱ばかりでは売れないし、論理的な機能説明だけでも売れません。想いを伝え、そして成分がどこに、どのように作用し、結果どうなるのか。想い入れと理屈のバランスが大切です。
女性は、美には欲張りですから最終的にどういうメリットが自分にあるのかを知りたいものです。私のどこがどうなるの?の問いに、明確に応えられない化粧品は売れません。
「スロワージュ」ではこれまで53点の新商品をリリースしました。新商品の中で一番売れているセラミド化粧品は約4万個になります。
次はスロワージュの専門店が欲しいですね。通販に胡坐をかき続けてはいけません。消費者の心を掴む為には、試し放題で、かつ、ブランドの世界観を体感してもらえる売り場が必要だと空想しています。
吉川 美樹氏
日本獣医畜産大学獣医畜産学部卒業。(現:日本獣医生命科学大学)目黒区消費者センター、商品テスト指導員を経て、95年にカタログハウスに入社。通販雑誌『通販生活』で新商品開発を担当。デビューさせた商品は450点を超える。2010年8月より、新コスメブランド「slowage(スロワージュ)」の責任者として新商品開発とカタログ制作に携わっている。