昨年11 月、佐賀県唐津市で、「ジャパン・コスメティックセンター(JCC)」が設立された。唐津市を日本版のコスメティックバレーにしようとする構想で、産学官共同で実現を目指す。
日本版のコスメティックバレー構想は、2012 年1 月に仏・コスメティックバレー協会名誉会長のアルバン・ミュラー氏が唐津市を訪れたことを機に浮上した。当時同協会は、アジア戦略上の拠点探しをしていた。韓国や中国に近い唐津の立地、甘草など薬用植物の生産能力や広大な農地、そして既に化粧品の製造、検査、物流関連会社が集まってミニクラスターを形成していたことが、目に止まった。
仏・コスメティックバレーは、世界最大の化粧品産業集積地。フランス中部シャルトルを中心に半径150 キロ内にロレアルやシャネルなど約800 の企業の研究施設や工場が集まり、製品出荷額は2 兆3,400 億円、7 万人の雇用を創出している。しかも周辺農家が栽培する植物から化粧品原料を抽出し、製造、出荷まで一貫して行っていて、化粧品周辺企業はもちろん、地場産業の活性化に繋げている。
2012 年の現地視察で、唐津市も同様に一次産業への大きな波及効果が見込めるだろうと考え、農商工が連携して6次産業化へ期待を寄せた。2013 年4 月に、いよいよ坂井俊之唐津市長が渡仏し、同協会と協力連携協定を締結した。そして11 月には唐津コスメティック構想推進の中核組織である「JCC」が設立された。現在、主に化粧品関連企業からなる正会員は33 社、支援会員として、佐賀県、唐津市、玄海町、経済産業省九州経済産業局、九州大、佐賀大、唐津商工会議所などの団体が参加している。
今後のJCC の目標は、「仏のブランド力と日本の製造技術を融合しアジア市場開拓に取り組む」こと。海外戦略の拠点としてハブ機能を唐津市に作り上げ、その過程で、アジア向けだけでなく、仏から日本への輸入、仏ブランドの受託製造、日本の原料を使用した仏コスメを製造するなどして海外へ展開していく。
もうひとつは「唐津市の一次産業の活性化」。化粧品として有効な成分を含有する農作物、植物の原料供給基地にするために、地域の生産者が加わる取り組みを考えている。
現在、国内の化粧品製造拠点は関東と関西に集中しているが、日本の化粧品市場が飽和している中で、いまや海外展開は必須。「日本の化粧品メーカーにおいてもアジア市場がより重視されれば唐津のハブ化は大きな魅力になるはず。そしてこの構想によって地域のビジネスが広がり、雇用が増える環境を創り出す。ゆくゆくこの動きを九州全域に拡げていきたいと考えている」。(唐津市 農林水産商工部 コスメティック産業推進室 室長八島 大三氏)。