国際化、高齢化の中で地域が魅力を発信する
5月の訪日外国人数が過去最高を記録した。昨年の2、400万人を上回るのは間違いない。宿泊地統計(下表)からは、都市部から「まだ知らない日本」の魅力を求めて、地方へと足を伸ばしていることが分かる。6月NPO法人健康と温泉フォーラムの総会で、大分の由布院温泉から溝口薫平氏(由布院玉の湯)と中谷健太郎氏(亀の井別荘)が記念講演を行った。由布院にも多くの外国人が訪れているという。いまの由布院の姿へのきっかけは1971年に遡る。「西ドイツで見た小さな温泉地の姿こそが、それからの50年の由布院の原点」と溝口氏は言う。バーデンヴァイラーというその小さな温泉地から「緑」「空間」「静けさ」の大切さを学んだ。帰国後、着々と滞在型温泉地への転換を図る。一方で、温泉地の映画祭や音楽祭という画期的な話題も提供した。50年を淡々と振り返る両氏は、穏やかな九州弁で、ただ一つのことを伝えていたように思えてならない。「その地域が持っているもの、その地域だからできることに目を向け、ただ懸命に取り組んだだけ」と。高齢化と国際化の波にもまれながら、いま多くの温泉地は行く方を模索している。しかし、大切なことは、無いものを欲しがるのではなく、持っているものを見極め、仲間と立ち向い、続ける、ということなのだろう。