スパ生き残り戦争に勝つために(商材選び編)第4回
取材・文/ライター 大崎百紀
4回連載の「商材選び編」。今回が最終回です。これまでカカオや緑茶、ウコンや果物、ヨーグルト、豆に米、ぬか、そして泥を使った商材の魅力などについて触れてきました。こう書いてみると、たくさんのものが顔や体に塗布されているものかと、驚くばかりです。
ワインやシャンパン風呂に入るなんて、20年前の大手エステサロン主導の時代、誰が考えたでしょう。今は商材も選択肢が多くて、バラエティ豊か。そして「オーガニック」三昧です。
オーガニック商材の中でも私が高く評価しているのが、オーストラリアのティートゥリー(もうひとつ挙げれば、「レモンマートル」)です。
昨春、豪州ゴールドコーストから車で2時間のところにあるティートゥリーの農場に取材で行く機会がありました。100㌶もの敷地内に、見渡す限り一面ティートゥリーの木。ここで植えられているのはネイティブのティートゥリーで、オーストラリア以外では育たないそう。
時期の雨量や気温にもよりますが、植えてから8ヵ月後には1m、1年では1.5~2mまで育つとか。ちょうどクリスマス時期に植えたものが、その時期私の膝の辺りまであって、これが私の身長以上に伸びて、葉から取れたオイルが、輸入され、いつの日か自分の手元に届くのだろうなと考えると、いったいどれだけの時間と手間がかかっているのかと気が遠くなる思いでした。
ここでは3,000kgの葉から取れるオイルは、僅か30kg。農場で、ドライバーを含み7人も乗った車で植えながら走らせる(車の後方で2人の人がチェック)人々に大きな声で話しかけると、不要になった茎と葉のくずがまとめられた、「ティートゥリーのくずの山」まで案内してくれました。思わず私は体をうずめました。
3週間前に破棄したばかりだそうで、まだティートゥリーの凛とした香りが立ちこみ、深呼吸すると、ティートゥリーの香りが、気持ち良かったのです(ごみですが)。
「これらは、すっごく、すっごく、いい肥料になるんだ」と話してくれた農場で働く彼らは、(空気が浄化されているため)冬の間も風を引かないそうです。「ここで作るものは何一つ無駄にはしないんだ。しかも、こちらで働けば病気にもならない。 リサイクルでヘルシーさ。」
こういう現場を実際に見て改めて思うことは、オーガニックであり続けるには、とてつもない時間と手間、コストがかかるということです。その負担はもちろん、それを仕入れる側に影響します。
でもこんなふうに一度現場を見て、彼らと話し、自分の手で触れ、匂いを嗅ぎ、その魅力を知ってしまえば、使う側の意識も変わってゆくことでしょう。
私はエステやスパの施術者たちも、このような機会を作って、生産者とつながるべきだと思っています。それは美容業界に限らず、食品など「オーガニック」な商品とともに仕事をする人たちすべてにいえる
ことなのではないかと思います。
施術者は、素晴らしい商材とともにそれを「正しく」伝え、活用する義務があると私は強く思うのです。