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そこは「魅せる」場所?「見せない」場所?

スパ生き残り戦争に勝つために(空間づくり編)第1回
そこは「魅せる」場所?「見せない」場所? 取材・文/ライター 大崎百紀
 今号から「スパ生き残り戦争に勝つために」第二弾として、「空間づくり編」を紹介してきたいと思います。 見た目の印象度upとしてインテリアの工夫はもちろん大切ですが、ただ綺麗にするだけではなく、セラピストにとってもクライアントにとっても「動きやすくて、心地よい」空間作り。そのためのヒントを海外
のスパの事例を出しながら探っていきたいと思います。
 先日、ベトナムのスパ巡りをしてきました。ベトナムは今まさにスパブーム。旅行会社とタイアップしたスパも多く、中にはサービスの質を疑いたくなるところもありましたが、「素晴らしい!」スパとの出会いもありました。
 そのスパは築100年のフレンチコロニアル建築の外観で、賑わう道路からは奥まったところにありました。建物の前にはレセプションスタッフが立っていて、私が見えた時点で遠くから微笑み、建物の中へと案内してくれました。カウンターで一言私の名前を告げた後は、少し離れた丸テーブルのところで座るように促し、敢えて私に「一人になる時間」をくれました。目線の先、テーブル中央にはトリートメントで使用する化粧品が置かれています。
 「ごく自然に目に入ります」が、お茶を頂き、ここではカウンセリングシートを書くのみ。そのため、こちらの椅子には背もたれがありません。さくっとお茶を飲み呼吸を調えるための場に過ぎないのです。つまり今は「見せない場」。
 次に案内されたパウダールームには、シャワー、お手洗い、サウナ、化粧台がコンパクトにまとまっていてクライアントにとっては楽チンな動線。カーテンの仕切りの向こうがカウンターのため、絶妙なタイミングでセラピストが次のトリートメントルームへの案内のために入ってきます。
 施術後に着替えていると「オーガニックスタイルの軽食でも用意しましょうか」と今度は別のセラピストが、カーテンから顔を出して声をかけてくれました。「Yes」と言ってカウンター前に戻ると、施術前には目に入らなかった壁一面のオーガニックな化粧品が視界に飛び込んでくるではないですか!思わず「魅せられて」その商品数の多さとバラエティの豊富さに感心し、即購入です。
 そして、屋外のプールサイドのパラソルの下でベトナム珈琲と野菜たっぷりランチを頂きました。帰る前にタクシーを待っている間にもう一度、最初に座った椅子に腰かけると、今度はまた最初に見た化粧品がとても気になるのです(どうしてでしょう?)。
 カジュアルなところに何気なく置かれた商品を、ふとした瞬間に見る/触ると、純粋に興味がわくというもの。そのテクスチャーに魅かれ、そこでも商品購入です。
 心地良いスペースだけでなく、商品もつい買ってしまう、クライアントには目に見えないマジックが、隠されているスパだな、と感じたのでした。そしてそれはすべて計算されて作られたようにさえ思えてしまったのです。

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