ダイエットは“体重”から、“見た目”の時代へ
小倉義人氏は、日本のダイエットで常識とされてきた「体重を減らす」という考え方に疑問を感じ、数年前「体重ではなく見た目」をコンセプトに、サイズや筋肉バランスなどを重視する独自の理論『オグラ式ボディコントロール』を確立。現在の美容業界に大きな影響を与えた。
芸能界でモデルやタレント専門に体系管理を行い、医療関係者や有名エステティシャンなど、多くの専門家から師事される小倉氏に話を伺った。
一日30人以上を診察
20代初めは関西の鍼灸整骨院で修業しました。約2年勤めましたが、院長が厳しい方で、患者さんを診るにもある試験をクリアしなければなりませんでした。
それは、新規で来院される患者さんの姿勢や歩き方を一目見ただけで、身体のどの部分が悪いか先にカルテに書き、症状と合致するか?というものです。これに正解するまでは患者さんに触れさせてももらえませんでした。
ちなみに、院長他スタッフが1~2名の整骨院は、一日に20人来院すれば盛況と言われますが、私が働いていたところでは、毎日100人以上が来院しており、単純計算で通常の5倍ほどの患者さんに触れてきたことになります。私は32歳と業界ではまだ若いですが、こういった経験をクリアしたことが今の私の基礎となっているのです。
整骨院で経験を積んだ後は、アスリートへの指導を行うパーソナルトレーナーとして独立しました。依頼を受けてモデル事務所のボディメイク研修の講師や、大手エステティックサロンのハンドマッサージの技術講師などもおこないました。
中高年のダイエットにも成功
1999年に、デビュー直後だった女優の吉岡美穂さんの肉体改造の依頼を受け、指導を行いました。それをきっかけに、タレントやモデルなどの体型管理や肉体改造の依頼が多くなり、芸能界中心の活動になっていったのです。
一昨年にはTV番組をきっかけに、女優の藤田弓子さんの肉体改造に取り組みました。
藤田さんは毎日お酒を飲む、運動は大嫌い、食事制限はムリという条件のうえ、60歳という年齢的な問題もあり、私以外のダイエットの専門家すべてが、さじを投げてしまったのです。
藤田さんは当初、内臓脂肪面積が139c㎡、ウエストが約90㎝以上ありましたが、最終的に内臓脂肪は約60 c㎡、ウエストも約70㎝までになりました。これは2つの医療機関で、正確に計測した結果です。
日本のダイエットの大きな誤解
日本のダイエットは体重を減らすことを重視しすぎた結果、本来の「キレイになる」という目的から外れ、世界的に見て遅れをとったと感じます。
オグラ式では、「まず体重のことは忘れる」としていますが、それは、モデルなどの均整のとれた体を持つ人は、筋肉量が多い傾向があり、体重は意外に重かったりするからです。
体重が何kgあるかは外見では分かりません。痩せているか太っているかを他人が判断するのは、結局“見た目”でしかないのです。
いまだに食事制限や単品を食べる方法をはじめ、運動中心に行う方法など、様々なダイエットがメディアで紹介されています。しかし結果が出ず、リバウンドも起こるため、どれも1年も持たずに短期的なブームで終わるのが現状です。
食事制限などで栄養が偏ると、飢餓状態になるだけでなく、たんぱく質が不足し筋肉がやせ細ります。筋肉は脂肪よりも重いため、体重は減りますが、それは“痩せた”のではなく“やつれた”のです。代謝も落ち、栄養を脂肪としてため込みやすくなるため、食べればリバウンドが起こります。
運動法も同じく、いままでのダイエットは、“○○しては駄目”などの「規則」でした。これでは強迫観念からのストレスもたまり、長続きしません。
オグラ式は、(ダイエットではなく)“ボディコントロール”なので、規則ではなく「習慣」なのです。これまでにないトッピング方式という今の生活の中で“やれることだけやる”方法なので、嫌なことは一切やらなくて良いのです。
ビューティ業界への期待
5月にサロン『ボディコントロールファクトリー』をオープンさせましたが、きっかけは藤田さんの「あなた自身のサロンがあれば、みんな安心なのに」という一言でした。
藤田さんは肉体改造の途中、痩せて皮下脂肪が落ちた際、腹部全体に重度のセルライトが出現しました。
セルライトは美容業界では「揉み出し」という強く揉んで潰す施術が良いとされます。しかし、身体の組織は強い刺激を与えられると防御反応で硬くなってしまいます。硬くなった組織に水分等が溜まり、さらにセルライトが増えてしまうのです。
私は独自のハンド施術を、1週間~10日に一回のペースで2カ月間行い、藤田さんのセルライトを解消させました。
業界では常識とされていることでも、正しい知識や技術を持っているとアプローチの仕方が変わり、結果が大幅に違ってくるのです。
日本の美容業界はホスピタリティに関しては素晴らしいと思います。しかし、一方で知識や技術が不足しているため、結果が出せないサロンが多いことも事実です。正しい知識と技術を習得し、結果を出せるサロンが増えていけば、お客様も満足し、業界も盛り上がっていくと期待しています。
そのため今後は、以前から問い合わせが多かった、私の技術やオグラ式の知識を教える場を増やしていきたいと思っています。