広島県呉市の仁方地区は「やすり」の産地として知られています。古くから軍港のある呉市の海軍工こうしょう廠で使われるなど、当地域の「やすり」は地域の産業に大きく貢献してきました。しかし、輸入品や紙やすり等の台頭により、今では産地としての規模は縮小しています。一方で、その品質の高さから、こだわりのやすりを求めるユーザーからは熱い支持を受け続けています。
その仁方地区で、1890 年から120 年以上にわたり、両刃やすりを製造しているのが、私共、(独)中小機構中国本部が支援する、㈱ワタオカです。同社は平成23 年より、従来の金属や木材を削る「やすり」の技術を活用した、「スキンケア用のやすり」を開発し、今までとはまったく異なる顧客ターゲット向けの商品開発と販売活動に取り組んでいます。
同社が提供しているスキンケア向けの商品は「なめらか爪やすり」と「滑らか踵やすり」の2 種類。爪やすりについては、やすりの特徴である「多方向から微細な目を立てる」ことにより、一般的な爪やすりよりも、削り易く、仕上がりも良いのが特徴です。また、踵やすりについても、カチカチに固まった踵が驚くほど良く削れると評判です。
派生品として「巻き爪用の爪やすり」なども、現在、研究中で、早期のリリースが望まれています。
やすりの技術で女性の美を磨く商品を提供する同社ですが、新たにやすり目を再現した、ブラッシング嫌いの猫用やすりを開発しました。猫の舌はやすり状になっていると言われており、同社が開発した猫がリラックスするやすり「ねこじゃすり」でブラッシングすると、猫がうっとりととろける不思議なグッズとなっています。
女性の美を磨くヘルスケア用のやすりとともに、猫と飼い主の心の健康に寄与するリラックスやすりを開発する同社は、 今後も目が離せない存在です。
(独)中小機構 中国本部 チーフアドバイザー 渡貫 久
食品スーパーマーケットで、現場、人事、業務改革、経営企画などの業務を経験。現在は、中小企業向けに市場調査、ビジ
ネスプラン策定支援のほか、プラン実行に関わる実務サポートなどを幅広く行っている。