ダイエット&ビューティーフェアでは会期中の9月12日、第1回ビューティテックシンポジウム「Beauty Techが切り拓く未来」を開催。関連分野の集中展示も行なった。最新のテクノロジーで顧客体験やマーケティングなど、大きく変わりるビューティービジネスの未来を考える機会となった。
“期待値”をマーケティングに
基調講演では㈱LDH JAPAN 執行役員 CDO デジタルマーケティング本部 本部長の長瀬次英氏が「元ロレアルCDOが考える日本のBeauty 戦略」と題しこれからの美容業界が考えるべきテクノロジー活用の本質について講演した。日本ロレアルで全体のデジタル化を担当した長瀬氏だが、現在はLDH JAPAN でエンターテイメント分野にステージを移した。
「物を売るのとタレントという商材・サービスを売るのでは全く違うため、新しいチャレンジ。この中からも今後のビューティの戦略が見えてくる」と話す。
長瀬氏はこれまでのデジタルマーケティングで難しかった“期待値” を取り入れたマーケティングに取り組むべきだと主張。顧客が店舗に訪れるまでの知識や経験、現場における顧客の雰囲気や反応、何回来店したか、どのような動線で店内を歩いたかなどを取り入れることではじめて“期待値” マーケティングが可能になると話す。「デジタルマーケティングは現場を疎かにしがちだが、日本人は基本的に現場で物を触って買いたいという傾向がある。そこが強く残っている以上、現場のデータをいかに集めるかを考えてもらいたい」と話した。
最新のマーケティングと海外展開
シンポジウムの後半は、デジタルソリューションを取り入れたマーケティングの提案や、海外マーケットへの美容商材の販売展開をサポートする各社を招き、2 つのテーマでパネルディスカッションを行った。
1 つめのテーマは「AI とXR が変える顧客体験と売上」。ファシリテーターに㈱アイスタイル Beauty Tech.jp 編集部の公文紫都氏、パネリストにパーフェクト㈱代表取締役社長の磯崎順信氏、㈱ニューロープ 代表取締役の酒井聡氏、㈱ジョリーグッド 代表取締役CEO の上路健介氏が登壇した。磯崎氏は商品を気軽に体感できるアプリ“YouCam メイク” を提供し、顧客の購買の選択肢を広げることで、活用店舗は400%の売上を達成しているという。また酒井氏はEC サイトでは、インスタグラムなどの影響もあり、一つのアイテムではなく、全体のスタイルを起点とした購買が伸びていると紹介。AI でコンテンツを解析し、人気の商材が売り切れた場合、類似商品を紹介することで販売の機会損失を減らす取り組みなども行っているという。
また上路氏はこれまでその場の体験だけで終わってしまっていたVR 技術が、すでに食品などでは産地を体感させて商品の魅力を伝え購買につなげている事例を紹介、さらに人材の流動化が激しい中で高度なVR が人材育成ソリューションとしても今後大きな役割を果たすと話した。
また2 つめのテーマ「J-Beauty が世界に出ていくために」では、公文氏と同じくBeauty Tech.jp 編集部の矢野 貴久子がファシリテーターをつとめ、C Channel㈱の代表取締役社長 森川 亮氏、COUXU ㈱代表取締役の大村 晶彦氏、PRIN Founder&CEO のYoon Mijoung氏をパネリストに実施。
大村氏は日本の化粧品は、機能性や安全性などが高く評価されているが、他国のものと比較して価格が高く、一方で美容、エステティック、まつげ・エクステなどのサロンとサービスを一緒に展開することに対して海外のバイヤーの関心が高いと紹介。さらに海外展開はどうしてもハードルが高く感じてしまうが、まずは海外の企業と直接話すことが近道だと話した。
森川氏は日本は平均年齢が高いため大人の女性に高く売る傾向があるが、アジア全域だと若い女性が圧倒的に多く、そうしたターゲット向けにパッケージを変えるだけでも売れ方が変わってくると話した。
Yoon 氏は「世界におけるアジア人の割合は非常に高いが、アジアにおける化粧品の製造は日本と韓国がほとんど。日本は化粧品の研究や歴史が優れているが、韓国は短い期間で成長できたのはマーケティング力がある。互いの力を活用してさらに世界に広げていければと思っている」と語った。
ビューティテック・ヘルステック展示も
また同展示会内では特別企画として「ビューティテック・ヘルステック集中展示」を行った。生活者から収集した食卓画像および画像と紐付いた情報をマーケティングデータとして提供するサービス「リア食™ 」を販売する共同印刷㈱は、シンポジウムにおいて登壇したパーフェクト㈱の最新顔認証技術を活用したサービス「YouCam メイク」など、各種デジタルソリューションを展示。その他、ヤフー㈱は、遺伝子レベルで健康リスクや体質を解析する「遺伝子検査キット」、㈱ナレッジフローではLine を活用したサロン経営システム「サロンSMS」を展示するなど、最新の技術を用いたサービスが紹介され、注目を集めた。