ここ数年急速に増加し、全国に1000ヵ所以上あるといわれる温浴施設の成否の鍵を握るのが美容サービスの充実である。なかでも顧客志向のきめ細やかなサービスが奏功し、独自のポジションを確立しているのが万葉倶楽部である。親会社は写真のプリントサービスを展開している日本ジャンボー。9年前より温浴を新規事業として立ち上げ、ノウハウを蓄積。なかでも美容サービスに関してはテナント任せでなく、地域の有力店舗と良好な協力体制を築きながら、客単価アップに繋げている。
万葉倶楽部(株)では、これまで東京都町田市の第一号店をはじめ湯河原など神奈川3店舗、静岡1店舗、さらに福岡1店舗、北海道2店舗の計8店舗を展開。おもに既存施設を有効かつ効率的にリニューアルし、立地条件に適った温浴施設を開発してきた。「横浜みなとみらい万葉倶楽部」は、これまでの集大成として昨年6月誕生した。
コンセプトは「癒しやくつろぎを基調とした温泉旅館を運び込む」こと。都市景観を借景とし、横浜の商業地、みなとみらいにおける非日常的な旅の思い出づくりをサービスの要に据えた。館内はゆかた着用。源泉は熱海と湯河原から毎日タンクローリーで運搬している。入館料2,620円、営業時間は朝10時から翌朝9時の完全入れ替え制。料金を別途支払うことで宿泊も可能だ。年中無休。深夜料金は3時以降から別途徴収する。年間100万人、売上高50~55億円が目標。
施設で提供する美容サービスは、ヘアーサロン&ヘッドスパ、手もみ、アロマ、エステティック、アジアンヒーリング、タイ古式マッサージ、英国式リフレクソロジー、足流療術、指圧マッサージ、中国式足底健康法、あかすり・よもぎ蒸しの10種類。
フロント営業グループマネージャー服部嘉一氏は「お客様は個々に微妙な好みがあるため、ラインナップを増やした。その上、先行施設での稼働率を考慮し施術台数などで変化をつけた」という。自社運営の指圧マッサージやあかすり以外は、協力会社5社による運営。そのポイントは「事業コンセプトを理解いただき、施設全体との調和を考慮した接客重視のサービスを提供できるかどうか。例えば施術中の接客だけでなく、出口までのお見送りなど、細かな心遣いも徹底している」という。
英国式リフレクソロジーは、ヒーリングルーム利用のお客のもとまで出向く。指圧は満足するまで、手もみ庵は部分だけという使い分けも進んでいる。
近年、関東近郊の埼玉、神奈川、千葉そして地方の中核都市に点在するスーパー銭湯は、互いの商圏を奪い合う飽和状態に陥っている。
(株)船井総合研究所第五経営支援部 温浴事業コンサルティングチーム小林祐司氏は「エステやリラクゼーション、岩盤浴など美容・健康関連のサービスを中心に客単価をあげるためのリニューアルを図り、儲かる仕組みへと転換したうえでオーナーに還元する仕組みを提供する運営受託専門会社が名乗りをあげている」という。また急激に数を増やした岩盤浴はもちろん、温浴施設と相性の良いホットヨガを併設することで、これまで顧客として少なかった20代から30代までの女性が固定客化する事例も生まれている。