地域の美と健康が動き出した【第59回】(愛媛県)
シルクはかつて、日本各地で多く生産され経済成長を牽引してきた重要な産業でしたが、現在はその多くが廃業し生産現場を近くで見ることができないほどに衰退しました。時代の変化とともに養蚕農家の高齢化や後継者不足など、多くの問題が原因で衰退してしまったと考えられます。
時代は変わり、シルクを繊維として使うことに加えて、医療、食品、化粧品など多くの分野で利用できるようになりました。シルクは、良質なたんぱく質であって主成分が人の肌の構成とほぼ同じという特徴を持っているため、人との親和性が高い物質と言え、医療現場では外科用の縫合糸に使われています。新しい使い方がシルクを再生させようとしているのです。
愛媛の生糸文化を絶やさず地域の伝統を守りながら革新していくことを目指して、「地域共創プロジェクト」として地域の養蚕農家や製造業者などが立ち上がりました。「愛媛シルク」の認知度向上にむけて、それぞれが商品開発や広報活動を続けており、化粧品や食品など幅広い商品が生まれています。中小機構四国本部は、農商工連携に関する支援をきっかけとして地域の活性化に向けた取り組みを支援してきました。そのほか、地理的表示(GI)保護制度で「伊予生糸(いよいと)」が登録されたことも地域にとっては大きな財産となっており、今では愛媛県全体での取り組みに向けてさらに拡大しているところです。
シルクの可能性を信じて、再びシルク産業を活性化させること、安定した生産体制の構築、地域あげての連携体制の構築など、いろいろな連携を通じて課題を一つずつ解決し、新しい価値を創出しようとする取り組みに対して、中小機構四国本部は価値を共有する仲間として、これまでと変わらず、これからも伴走していきたいと考えています。
「愛媛シルク」ホームページ https://ehime-silk.org/
中小機構四国本部 支援推進課
藤猪 和也
平成8年四国経済産業局に入局、中小企業支援業務を複数経験した後、令和4年5月より中小機構四国本部に出向。