北里大学名誉教授/医師
NPO 法人アンチエイジングネットワーク理事長 塩谷 信幸氏
世界に先駆け高齢化が進む日本の美容・健康産業界では、ますます「アンチエイジング」がキーワードとしてクローズアップされています。アンチエイジング医学の第一人者である塩谷信幸氏に、老化やアンチエイジングの現状や、同氏が提唱するスローエイジングについて聞いた。
●アンチエイジング分野では老化の原因はどう考えられているのですか?
老化は様々な要因が複雑に絡み合って日々進行していきます。西洋医学においてもその概念や定義も決まっていません。実は原因もはっきりとは解明できていないのですが、現在考えられているものとしていくつかあります。
まず、「体内時計説」。人間の細胞を構成する細胞に寿命があるという考えです。細胞分裂の回数に限界があって体質や生活環境に影響されるというものです。次に「DNA 損傷説」。細胞が分裂するたびにDNA が損傷を受けてそれが老化に繋がるというもの。
そして「ホルモンの低下説」。成長ホルモンのように加齢とともに分泌量が低下するホルモンがあります。これが細胞の再生や修復、免疫力アップに関わっています。そういったホルモンに着目したことをきっかけにホルモン補充療法が脚光を浴びアンチエイジング医学の研究が盛んになったのです。
最後の説は、よくご存知の「活性酸素」です。タバコ、排気ガス、紫外線、食品添加物、精神的ストレス、睡眠不足、速い乗り物といった酸化ストレスが体内を錆びさせ老化を進行させるというもの。さらに最近老化原因物質として注目されているものにAGE(終末糖化産物)があります。
●提唱されている「スローエイジング」とは?
形成外科医となってちょうど50 年になります。米国への留学経験が長かったことからアンチエイジング医学に早くから取り組んできました。アメリカでは美容外科をはじめサプリメントやホルモン補充療法といったアンチエイジング医学は熱心に研究されていて、いまや200 億ドル産業という大きな産業に成長しています。これは老化を病気ととらえ、いかに若返るかを追究しているからです。その状況は米国内でも少々行き過ぎという批判もあります。
私も昨今のブームのようなアンチエイジングのとらえ方に大きな懸念を抱いています。本来アンチエイジング医学は、行き詰った西洋医学を打破し、人間に幸福をもたらす画期的な新医療の可能性を秘めたもののはずだからです。
そこで、考えたのは、「スローエイジング」です。身体と精神的な年齢を合わせた生物学的年齢(バイオロジカルエイジ)に注目し老化を遅らせることで、出来るだけ暦年齢より若い身体と心を獲得することです。国内外の老化についての研究結果から、これまで避けられないとされていた老人特有の病は、老人だから罹患したととらえるべきでないと考えられるようになってきました。身体の処理能力をできるだけ落とさなければ病気の発症を抑えられる、つまりスローエイジングです。
以下、詳細は紙面でご覧下さい。
→購読申込・問合せへ
塩谷 信幸氏
北里大学名誉教授
北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長
AAC クリニック銀座 名誉院長
NPO 法人アンチエイジングネットワーク理事長
見た目のアンチエイジング研究会代表世話人