~品質対応とコスト削減が課題、高齢者向け食品開発で期待も~
食品の殺菌は一般的に加熱殺菌が浸透しているが、近年は食品品質に対する要求の高まりを背景に、加熱殺菌技術も格段の進歩を見せている。熱による食品の変質を最小限に抑えるため、殺菌時間を短縮したものなどはその一例。一方、熱をかけられない生鮮食品や液体食品、さらには製造施設や製造用水などにおいて、オゾンや紫外線をはじめとした非加熱殺菌装置の利用も拡がっている。また、高齢化社会の到来に伴い、高齢者や要介護者に向けた固液混合食品や流動食の開発が進展しており、これら食品の生産に殺菌技術は欠かせないとの指摘もあることから、その潜在需要に期待する向きもある。
本稿では、殺菌効果はもちろん、製品の高品質化や生産コスト削減などの課題に対応する加熱・非加熱殺菌装置の開発と利用動向をみていく。
■加熱殺菌の現状と開発動向
食品・飲料業界の設備投資は昨年後半から順調に回復してきたものの、3.11東日本大震災の発生で今春は想定外の低空飛行を余儀なくされたところも多い。しかし、その後はミネラルウォーターが特需に沸き立ち、熱中症対策もあってスポーツドリンクのほか、茶系、炭酸など各種飲料の需要もほぼ好調に推移している。また、内食需要の拡大に加え、常備食としての利便性が評価されたレトルト食品やインスタント食品の需要も膨らんでおり、これら食品・飲料製造ラインの中核に位置する殺菌装置の需要を刺激する材料は豊富。今春以降に東日本で実施予定だった設備投資は、一時的に先送りや見直しとの判断もあったようだが、市場回復が鮮明になりつつあるため、ここにきて新規計画も含め設備投資の動きが拡がりつつある。電力不足に伴う今夏の生産体制変更など、まだ流動的な要素を残しているものの、今秋以降、殺菌装置の引き合いが活発さを増しそうだ。
UHT殺菌装置
・チューブ式熱交換器「NTA型」
・「シェル&チューブ式熱交換器」
・「APVインフュージョン・システム」
・直蒸気加熱システム「スピンジェクョン式」
・「ノリタケ連続加熱殺菌冷却システム」
レトルト殺菌技術
・高温高圧調理殺菌試験機ほか
・熱水噴流式調理殺菌装置「SGC型」
ジュール加熱殺菌技術
・ジュール加熱殺菌装置「エルボジュール」
・「ジュール加熱式殺菌装置」
過熱水蒸気殺菌技術
・粉粒体殺菌装置「KPU」
・過熱蒸気発生装置「IHSS」
マイクロ波殺菌技術
■食品産業における非加熱殺菌の利用動向
食品では、熱にかけられないものデリケートなもの、熱によるダメージの激しいものなどがあり、近年非加熱の殺菌技術に注目が集まっている。近年デリケートな原材料を用いた食品や、新しい触感を訴求した商品の開発が行われる中、加熱殺菌では天然の風味やテクスチャーを損なったり変色させたりすることがあり、物性に影響を与えずに殺菌したいという要望も多い。非加熱殺菌は、生鮮食料品や水、飲料を中心に利用が広がっており、化学物質の残留性も少ないため、食品業界ではさまざまな分野で利用されている。
また、HACCP対応やISO対策など品質安全対策の強化が進む食品製造および加工施設において、施設内の空中浮遊菌対策や原料水の殺菌などにも最適な非加熱殺菌技術が利用されている。
殺菌・脱臭・洗浄にアプリケーション広がるオゾンの動向
・オゾン水生成器「ダイヤモンドウォーター」
・オゾン水生成装置「PS-8000」
・研究開発用オゾン発生器「KQSシリーズ」
食品・飲料に加え浄水関連でも需要高まる紫外線殺菌
・「紫外線表面殺菌装置」ほか
アプリケーションが広がる電解水
・F・クローラ水(電解次亜水)生成装置「F・クローラ」