大規模食中毒、残留農薬混入、異物混入と食の安全性を脅かす事故が起こる度に、業界では自主検査を強化してリスク管理に努めてきた。その甲斐もあってか、昨年は大きな事故もなく食品の危害物質検査需要は安定した動きとなっていたが、原発の放射能問題で、再び食の安全性に大きな注目が集まるようになっている。食品の放射能の検査対象は、事故直後は原発周辺地域の葉物野菜と飲用水のみだったが、その後様々な食品に拡がり、現在は風評を抑えるための検査需要が供給(受託検査)を上回る状況だ。
検査指標に変更のあったカビ毒や米のカドミウム以外は、この1年大きな事故もなく、一定の検査需要で落ち着いている。残留農薬も一成分析の項目を増やす検査は一段落し、各社とも安全性と効率のバランスを図るようになっている。受託検査機関の課題としてもいかにユーザーのニーズや対象食品に対して効率良くカスタマイズしたメニューを提案できるかが鍵となってきている。分析機関の差別化としては、新しい分析項目、カスタマイズメニューの提供のほか、登録検査機関認定やISO17025の試験期間認定の取得、FASPASの制度管理参加、さらに分析前のデータの絞り込みや、分析後のデータ解析、さらに改善提案まで行うコンサルティング機能が求められている。