食品と開発10月号「海外開発トピックス」(海外雑誌の記事の和訳)記事紹介(Prepared Foods, March, 68(2017)より)
食事のジレンマ Diet Dilemmas
最近人気のある食品や栄養のトレンドが単に一時的な気まぐれなのかそれとも本物のパラダイム変化なのかは、メーカーにとっての難しい問題である。クレームと一般的な認識のいずれに科学がマッチするかを決定する宿題がメーカーに課されているのみならず、食事療法の実用性及びそれに対する投資がメーカーにとって値打ちがあるのか、また消費者にとって有用かどうかを調査しなければならない。
消費者に体重を減らしたい理由を尋ねると、多くが心臓病を避けたいからと述べている。アメリカ心臓協会によれば、過去数十年間における臨床治療法の進歩は、心臓発作になった極めて多くの人が生存するという結果を生んでいる。
同じ期間に、心臓発作で生き残った患者の特徴は、肥満、メタボリックシンドローム及びⅡ型糖尿病の有病率の点で他の人たちと違っていた。死亡原因のトップが、疫学レベルでの肥満状態にあることや心臓病のあることで、1,000万人にとって体重削減が必須事項となった。
その結果、心臓発作の患者のためのアメリカ心臓協会ガイドラインは、食事や運動を通じて健康な体重を達成かつ維持することの重要性を強調しているが、これは生涯にわたる健康な食事パターンの達成維持を強調している2015〜2020年アメリカ人のための食事指針と同じである。
消費者は現在、ダイエットすることを体重削減のためだけでなく、免疫の強化、エネルギーの増大及び加齢の緩和といった前向きな状況を得るための手段とみなしている。手短に言えば、食事にはあらゆるものが含まれていなければならない。ダイエット食や飲料の開発者にとって、このことは、製品が内容的には同様のものでなければならないことを意味している。
■健康に良い食事
生涯にわたっての健康な食事パターンを作り上げるに当たっては、厳密な調査が必要である。確かに、果物や野菜の摂取量を増やすというアドバイスに対しての異論はほとんど見られない。しかし脂肪の評価回復に加えて、最近の低炭水化物食の流行は、多くの消費者に食事に関するアドバイスに問題があるとの印象を与えた。このことは、とりわけ食事脂肪とコレステロールに関して言えることである。
それでは、食事に関してどちらの方法がいい結果になるだろうか?低脂肪?高脂肪/高タンパク質? 高炭水化物または低炭水化物? いくつかの研究では、低炭水化物食は、一時的な体重減少、循環トリグリセライドのレベル低下及び心臓発作からの防御を示すマーカーである高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールの増強などと関係している。しかし、心臓発作生存者の間で、体重削減を目的とした低炭水化物食の長期にわたる影響については、最近まで研究されていない。
2014年にジャーナル・オブ・ズィ・アメリカン・ハートアソシエーションに発表されたレポートは、進行中の二つの研究から得られたデータを編集したものである。二つの研究とは、ナーシズ・ヘルススタディ(1976年に登録した30〜55歳の女性看護師12万1,700人による前向きコホート研究)及びヘルス・プロフェッショナル・フォローアップスタディ(1986年開始時に40〜75歳のアメリカ男性健康専門家5万1,529人の前向きコホート研究)である。
この生涯にわたる研究への参加者は、年に2回ライフスタイル及び医学的履歴の両方に関する質問に答えることになっている。レポートは、2,258人の女性と1,840人の男性のサブコホートを対象にしたものであり、その全ては心臓発作生存者ではあるが、各自のコホート研究の開始時点では心血管疾患、脳卒中及びがんにかかっていない人たちである。それぞれは、心臓発作前または後に食事摂取頻度調査票を少なくとも一枚提出した。
研究の結果は、低炭水化物食に関する他の研究と一致するパターンを示したが、これは大衆の感覚を支持するものではなかった。最初の心臓発作後に低炭水化物食を順守したことと健康効果の関係は認められなかった。加えて、動物脂肪やタンパク質含量が高い低炭水化物の食事を順守する程度が高くなればなるほど、当初の心臓発作後の全死因及び心血管系の原因による死亡率は高くなった。
データベースとしてナーシズ・ヘルススタディのみを使用してニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに2006年に発表された初期の研究は、炭水化物が少なくタンパク質及び脂肪の多い食事が、女性の心臓病のリスクを高めるわけではないことを示唆していた。しかし、脂肪やタンパク質の起源が野菜であった場合は、これらの食事は冠状動脈疾患のリスクを穏やかに低下させることが調査によって分かった。
(以下省略:低炭水化物、GI値、パレオなどの話が続きます)
10月号では、以下の内容も掲載しています。
●線をはみ出した色 Color Outside The Lines (天然系色素に関する米国での話題)
/Prepared Foods, February, 50(2017)