――ここでは雑誌に掲載した内容の一部を紹介いたします。
〈機能性表示を巡って〉第42回
機能性表示食品における知的財産を活用したブランド戦略
特許業務法人ユニアス国際特許事務所 パートナー弁理士 石川 克司
はじめに
本稿では、機能性表示食品のブランド戦略において、他社との差別化のための商品ポジションとターゲット層の選定、機能性表示、商標などの知的財産をどのように活用すべきかについて、ファンケル社の活用事例を挙げて説明をする。
1.ブランドと商標権を取得するメリット
商品やサービスのネーミングは、ブランドとも呼ばれるもので、自社の商品やサービスと他社のものとを区別する機能が基本となる。ブランドは商品やサービスの顔であって、お客様と直接に接するコミュニケーションツールとしての役割を担い、商品やサービスの質、本稿における機能性の表示などと共に重要な位置づけとなる。
従ってブランドとは、「シャネル」、「エルメス」、「ロレックス」のようないわゆる高級ブランドのみではなく、自社が商品やサービスのネーミングとして、継続的に使用しているものを指す。
ネーミングやブランドは、使えば使うほど、長期間になるほど、信用力や良い印象などが付帯し価値が高まる。そこで、このような自社で使用するネーミングについて、商標登録を行うことで、第三者の似たようなネーミングの使用や他社の模倣を排除して、独占的に使用をすることがでる。
2.「スマホえんきん」のブランド戦略
(1)「スマホえんきん」
「スマホえんきん」は、非常に高い知名度を持つ「えんきん」のシリーズ商品として、本年 3月17日に機能性表示食品として発売されたものである。「えんきん」は、機能性の表示を「手元のピント調節機能を助けると共に、目の使用による肩・首筋への負担を和らげます」として中高年をターゲット層としていた。
一方で「スマホえんきん」は、目の疲れの原因として、20代~40代ではPC・スマホによることが多いというファンケル社の調査結果に基づいて、若年層をターゲット層にした商品である。
(2)ブランド戦略について
栄養補助食品や特定保健用食品、医薬品など、人の健康に関する食品は、多数市場に存在することから、競合する商品は多くある。例えば、消費者庁の機能性表示食品の届出情報検索(平成 29年 11月17日更新)を行うと1167件の届出された食品がヒットする。このように競合する商品が多くある中で、自社の商品を認知してもらい、消費者から自社の商品を選択してもらうためには、競合の他社商品と自社の商品とを差別化する必要がある。
そこでファンケル社は、機能性表示食品の届出をいち早く行うと共に、商品のポジションやターゲット層を絞り込むことで自社の商品を差別化した。具体的には、商品のポジションを「手元のピント調節機能を助ける」商品に絞り込んだものについて、機能性表示食品の届出を行って、ターゲット層を「中高年をターゲット層」とした商品で、他社との差別化を図り、この分野でのナンバーワン商品となることを目指した。
―以下、続きは月刊『食品と開発』1月号にてご覧ください。
食品と開発では、機能性表示食品制度に関連した情報提供のための連載〈機能性表示を巡って〉や、機能性表示食品の届出・受理の状況をまとめた連載「機能性表示食品の発売動向を追う」を掲載しています。ご興味のある方はぜひご購読をご検討ください。
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