――ここでは雑誌に掲載した内容の一部を紹介いたします。
【3月号連載】機能性表示を巡って―第45回
機能性表示食品制度における食品間の相互作用とは
城西大学薬学部データベース委員会 金 賢珠、日比野 康英
はじめに
世界に類を見ない長寿国の日本において、取り組みを強化していかなければいけない課題は、平均寿命と健康寿命との差を縮めていくことである。最近の報告によると、男女の差はあるものの約10年間を健康ではない状態で人生を送ることが余儀なくされている(平成29年版高齢社会白書、内閣府)。誰もが不健康な老後を過ごすのは不本意であるが、たやすく「健康」を手に入れたいと考えるのもまたやむを得ないことである。健康の維持・増進を目指し、機能性食品への関心が高まるのは、このような欲望がそうさせているからであろう。体に良いもので病気が予防できると言われれば、よほど高額でなければ積極的に取り入れたいと思うのが常だからである。
食品の製造・加工技術が進化し、食品から「機能成分」を抽出・濃縮し、多種多様な機能性食品を作り出せるようになった今日、益々新規な食品の登場に期待も高まっている。しかし一方で、このような食品に関する安全性評価や個人への的確な情報提供など多面的に補完するサポートは必ずしも十分とは言えず、国が推進する各種制度の実質化に向けて、これら食品を利用する消費者自らの意識改革も求められている。
本稿では、機能性表示食品制度に必要な食品間の相互作用の考えに焦点をあて解説していきたい。
“食品”間の相互作用と機能性表示食品制度
まず、「食品と薬(医薬品)の相互作用」について考えてみよう。例えば、高脂肪食品は薬の吸収を高めて薬効に影響を与える、薬を牛乳とともに服用してはいけない、高血圧治療薬のカルシウム拮抗薬はグレープフルーツジュースとともに服用しない、抗凝固薬のワルファリン服用時に納豆の摂取は望ましくないなど、注意喚起が必要な多くの「相互作用」が知られている。これらの食品と薬の相互作用については、in vitroやin vivo実験、臨床研究による科学的に信頼できるデータが蓄積されている。薬剤師は、投薬時にその相互作用の可能性を「科学的根拠」にもとづいて分かりやすく患者に説明する義務を負っている。
一方、「食品と食品の相互作用」はどうだろう? おそらく、その概念の存在自体が議論となろう。
―以下、続きは月刊『食品と開発』1月号にてご覧ください。
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