――ここでは雑誌に掲載した内容の一部を紹介いたします。
機能性食品開発のための知財戦略(8)
食品用途発明の最新報告〈2018年5月登録/公開〉
特許業務法人ユニアス国際特許事務所 パートナー弁理士 春名 真徳
2.今号注目の機能性
下記表1 及び表2(注:いずれも雑誌掲載、ここでは割愛)にて集計した特許事例では、[乳酸菌]に関する食品用途発明が多く抽出されたため、これらの事例について紹介したい。
乳酸菌に関する用途発明
乳酸菌は、乳酸を生成する細菌群の総称であり、ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌、ラクトバチルス(Lactobacillus)属細菌、ストレプトコッカス(Streptococcus)属細菌等がある。
これらの細菌の用途発明では、請求項に、これらの細菌名と機能性の用途とが規定される。
特許第6325829号<高血圧の改善>
請求項1において、「乳酸菌ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ クレモリスH-61株の菌体が粒度5μm未満に微粒子化されたもの」による「降圧」用途が規定されている。
実施例では、本件特許の降圧剤を被験者に、1,000mg(菌数約5,000億個)、1日1回服用させ、服用直前の3日間における収縮期血圧及び拡張期血圧の各平均値と、服用中の3日間(被験者により何日目かは異なる)における収縮期血圧及び拡張期血圧の各平均値とを比較することにより降圧効果を評価している。
特許庁の審査においては、主引用文献により、乳酸菌ラクトコッカス クレモリスの菌体を有効成分とする内臓脂肪減少剤が示され、進歩性が否定されたが、「H-61株」の「菌体の粒度を0.5μm未満に微粒子化されたもの」における「降圧」用途は開示されていないことを反論し、拒絶理由が解消している。
本件特許のように、請求項において、細菌の属名レベルではなく、種名・株名レベルまで限定して規定することで、権利範囲は狭くなるが、引用文献との差別化が行いやすくなる。
本連載で纏めているデータベースにおいても、乳酸菌等の細菌の用途発明では、半数以上が種名・株名レベルまで限定して登録に至っている。食品分野の近年の傾向として、種名・株名を商品に明示して、継続的に使用し、種名・株名自体のブランド価値を高めていく戦略にも沿うものと考えられる。
なお、本件特許と同一の特許権者・同一の成分により、「TGF-β低下」用途も権利化されている(特許第6325828号、表1(11))。
特許第6325828 号では、請求項3 及び請求項4において、「AOS(Aneurysm-Osteoarthritis Syndrome、動脈解離骨関節症候群)の症状改善」用途、及び「皮膚疾患の症状改善」用途を具体的に規定している。
―以下、続きは月刊『食品と開発』8月号にてご覧ください。
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