――ここでは雑誌に掲載した内容の一部を紹介いたします。
機能性食品開発のための知財戦略(10)
食品用途発明の最新報告 〈2018年7月登録/公開〉
特許業務法人ユニアス国際特許事務所 パートナー弁理士 春名真徳
はじめに
本連載では、毎月、①新たに登録される食品用途の成立特許と、②新たに公開される食品用途の公開公報とを、著者が調査・分析して報告を行う。また、汎用性が高く、参考となる請求項や特許明細書の記載形式、権利化手法、知財戦略などがあれば簡潔に紹介を行う。
1.調査の方法
特許請求の範囲に、「…のための食品…、…用食品組成物、…改善剤」などの食品用途発明で頻用される文言を含み、人体に対する機能性に関する用途が規定された特許を抽出する。厳密には特定保健用食品、機能性表示食品にてヘルスクレームとすることができない機能性(用途)や、認可され得ない成分についても参考となる限り、除外せず掲載している。
原稿執筆時の関係上、本号では、2018年7月1日〜7月末日までに特許公報の発行又は公開(再公表)された特許案件についての紹介を行う。
今号より、成立特許リスト(表1(注:ここでは割愛、雑誌に掲載))において、情報提供回数の項目を追加した。情報提供制度とは、簡潔には、特許庁に対して匿名で行える、他社特許の権利化を阻止するための制度である。情報提供回数が多い案件は、それだけ競合他社への影響力が高いことを間接的に示している。
また、今号より、公開公報リスト(表2(注:同))において、国内出願による公開特許公報だけでなく、日本語でなされた国際出願による「再公表特許公報」も対象に加えた。これにより、国内企業案件の海外への展開も確認することが可能となる。
2.今号注目の機能性
表1 及び表2にて集計した事例では、[タイトジャンクション]など肌のメカニズムに関する用途発明が多く抽出されたため、これらの事例について紹介したい。
タイトジャンクション等 肌のメカニズムに関する用途発明
美容に関する用途発明を権利化する場合、自社商品においてアピールしたい効果だけでなく、競合他社において、どのような商品アピールがされているかを把握しておく必要がある。競合他社にとって魅力的な用途を権利化することによって、同成分を配合する商品での差別化に繋がるためである。
近年の美容業界では、高機能・高付加価値商品や機能性原料を多種配合する商品を中心に、ホームページ等での広告において、シワや肌荒れ等の肌状態の悪化の原因(メカニズム)の説明や、そのような原因に対して、配合成分がどのように改善効果をもたらすかを、図式化したりデータにより説明することが増えている。
例えば、肌荒れに関しては、ストレスや睡眠不足等により、角層の未熟化が進み、皮膚バリア機能が低下する結果、肌荒れ等の不調を来すことが説明されている1)。このようなメカニズムに対して、特定の成分は、タイトジャンクション(細胞間接着構造)を活性化させ、皮膚バリア機能の正常化に寄与することが説明されている。
美容関連のブログや、商品比較サイトにおいても、バリア機能とタイトジャンクションとの関係性が説明されており、「タイトジャンクション」等の肌のメカニズムに関連する用語は、消費者にとっても、徐々に認識が高まっているものと考えられる。
このような状況であれば、肌荒れ改善用途等の最終的な下流の用途 だけではなく、皮膚バリア機能やタイトジャンクション改善用途等のメカニズムに関連した効果を実証したうえ、用途発明として権利化しておくことは、販売戦略上有意義である。
――以下、続きは月刊『食品と開発』10月号にてご覧ください。
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