厚生労働省は3月22日、第6回「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会を開催し、最終的な報告書案を取りまとめた。
報告書案では、国内外の学術論文などのエビデンス等に基づき、高齢者の低栄養予防、フレイル予防のための目標量や、高齢者のより細かな年齢区分による摂取基準、低出生時体重などが問題となっている小児または妊産婦など一部未設定となっている摂取基準などを新たに設定。管理栄養士など食事摂取基準(2020年版)の利用者が、効率的かつ適切に理解できるよう、その概要として、総論と各論のエネルギー・栄養素における策定した指標やその策定方法等も盛り込む。
食事摂取基準(2020年版)で示されるエネルギー及び栄養素の基準は、エネルギーの指標はBMI、栄養素の指標は推定平均必要量、推奨量、目安量、目標量、耐容上限量で構成。生活習慣病(高血圧症、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病)の発症予防は目標量として設定し、高齢者のフレイル予防も同様に目標量として示した。生活習慣病の重症化予防については、発症予防を目的とした量(目標量)とは区別して示されている。
各論で設定した各指標の基準は、全て当該性・年齢区分における参照体位を想定した値で示しており、参照体位と大きく異なる体位を持つ個人又は集団に用いる場合には注意を要する。また、 栄養素については、身体活動レベルⅡ(ふつう)を想定した値である。
2015年版からの主な変更点は
①中高年層(50歳以上)のたんぱく質の目標量(下限)を男女ともに引き上げ
(2015年版:13~20%エネルギー→2020年版:50歳~64歳14~20%エネルギー、65歳以上15~20%エネルギー)
②ビタミンDの目安量を1歳以上の男女各年齢層で引き上げ
(2015年版18歳以上5.5μg/日→2020年版:8.5μg/日)
③ナトリウムの食塩相当量の目標量を引き下げ
(2015年版:18歳以上男性8.0g/日未満、女性7.0g/日未満→2020年版:7.5g/日未満、女性6.5g/日未満)※高血圧および慢性腎臓病(CKD)の重症化予防のための食塩相当量は男女とも6.0g/日未満
④微量ミネラル(クロム)に関する成人の耐容上限量を新たに設定
(2020年版:18歳以上500μg/日)※目安量は10μg/日
たん白質やナトリウムについては弾力的に運用する旨を追記し、総論において、肥満症や女性のやせに関する問題を明記。炭水化物の項では糖類(単糖類、二糖類)の過剰摂取による肥満や齲歯の懸念について、脂質異常症の項では、糖質と中性脂肪との関係性等についても触れ、今後の課題としている。
今後、各栄養素等の摂取基準(具体的な数値)に係る内容に関するパブコメを実施し、2019年度中に厚労省が「食事による栄養摂取量の基準」を告示する予定。報告書も公表する。2020年度から運用を開始する(2024年度まで)。