DSMは昨年11月25日、『「持続可能性」と「免疫」から見据えたDHA・EPAの最新情報』と題したオンラインセミナーを開催した。
2050年に世界人口が90億人超と試算されるなか、科学と機能性素材を通じて、どのように地球と人類社会のサスティナビリティーに貢献できるかがDSMグループのミッション。今回、循環器系、脳や認知機能、視力や目の健康などの研究が進むDHA・EPAに焦点を当て、栄養脂質をとりまく市場トレンドや持続可能性などの新しい方向性、オメガ3脂肪酸と免疫に関わる最新情報について講演した。
DSM バイスプレジデント グローバルニュートリショナル リピッツの中原雄司氏は、食生活の変化、加工食品、外食・中食の増加が要因で、オメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸との摂取バランスが大きく崩れていることに言及。人間にとって理想とされるオメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸の摂取比率2:1~5:1の実現に向け、安定的にオメガ3脂肪酸(DHA・EPA)が摂取できる供給体制が重要である旨を述べた。
とりわけ、気候の変動、環境課題でDHA・EPAの供給源となる魚の漁獲高が減少し、オメガ3脂肪酸の供給不足が懸念されており、持続可能な新たな選択肢として、藻類由来のDHA・EPA混合油を提案している。植物由来・品質管理された閉鎖された環境下で生成された藻類から水で抽出した製品で、海洋資源に依存することなく、海洋汚染とも無縁であり、持続可能性を追求する、と述べた。
英国サウサンプトン大学医学部栄養免疫学のフィリップ・カルダー教授は、「ライフコース(人生)の視点から捉えた免疫におけるオメガ3脂肪酸の役割」と題し、妊娠中、乳児期、小児期、成人期から老年期までのDHA・EPAの摂取効果について講演した。
免疫系には自然免疫と獲得免疫の2種類あり、細菌やウイルスから守ってくれる一方で、暴走すれば自己組織を破壊し、自己免疫疾患を引き起こすことになるため、両者のバランスが大事。オメガ3脂肪酸は、このバランスを制御するうえでとても重要であり、摂取量が増えるほど、免疫細胞膜中への取り込み量も増える。それが細胞膜の構造や機能に影響を与え、細胞膜の物理的性質である膜の流動性が変化し、多くの免疫細胞の働きが向上し、適切に働くようになる。
免疫系を活性化することで人々を感染から守るとともに、炎症を制御することで炎症性疾患から守っているとし、オメガ3脂肪酸が免疫系のバランス維持にどのように貢献しているかについて、様々なライフステージでの研究例(アレルギー発症リスク低減、炎症を軽減する抗炎症作用、炎症収束物質としての機能)を紹介した。
DHA・EPAには老化に伴う炎症を制御する働きがあり、炎症を止める際に働く新しい物質(レゾルビン・プロテクチン・マレシン)も発見されており、心臓病予防やインスリン抵抗性予防、認知機能低下防止などに効果があるのはこのためと考えられる、と述べた。
このほか、オメガ3脂肪酸業界の国際団体GOEDのエクゼクティブ・ディレクターのエレン・シャット氏は、DHA・EPAの市場トレンドとして、中国市場が伸びていることや、日本や米国など高齢化が進む地域でのオメガ3脂肪酸摂取が重要となる旨を詳細なデータを交えて紹介。DSMの藻類由来DHA+EPAオイルの新ラインアップ「life’sDHA™SF55」(DHA550mg/g含有)も発表された。