キリン中央研究所は、慶應義塾大学との共同研究で、乳由来のβラクトペプチドの1つであるGTWYペプチドが集中力を高めるメカニズムの一端を解明し、3/18~21に開催の日本農芸化学会2021年度大会で発表している。発表演題名は「乳由来βラクトリンの頭頂葉領域の神経活動活性化による注意集中力向上」。
βラクトペプチドは、乳たん白由来のペプチドで、トリプトファン‐チロシン(WY)のアミノ酸配列を含み、認知機能改善作用を有するペプチドの総称で、2018年に発見された。また、GTWYペプチドは、βラクトペプチドの主要な1成分で、グリシン‐トレオニン‐トリプトファン‐チロシン(GTWY)という4つのアミノ酸配列のテトラペプチドで、慶應義塾大学と連携したヒト試験でGTWYペプチドが記憶力および注意力を改善することを2019年に報告している。
<研究の概要>
健常中高年を対象に、ランダム化二重盲検比較試験を実施し、GTWYペプチドを含むサプリメントの摂取がヒトの脳活動に及ぼす作用を検証した。
45~65歳の健常中高齢男女30名を対象に、GTWYペプチド摂取群とプラセボ摂取群に無作為に割り付け、6週間摂取する二重盲検化試験を行った。 摂取0週目および6週目に認知機能課題実施中の脳内の神経活動状態を64チャネルの脳波計を用いて測定した。
すると、GTWYペプチド摂取群では、 摂取6週目の集中力を要する認知機能課題中の頭頂葉および前頭葉から頭頂葉の測定箇所において検出される脳波P300の振幅が、プラセボ群と比較して統計学的に有意に高まることを確認した。P 300は集中力に関わる神経活動の指標とされており、GTWYペプチドが集中力を高める脳内のメカニズムの解明につながると考えられた。