「健康フォーラム2024」(主催:太陽化学、共催:セブン-イレブン・ジャパン)が、7月26日(金)に東京国際フォーラムで開催された。「次世代の健康アプローチを考える 食産業とヘルステック、PHR活用と健康ビッグデータからみる食の未来」と題して行われたフォーラムは168社434名を集め、最先端の話題と各方面の取組みが紹介された。
講演に先立ち、太陽化学 代表取締役社長 山崎長宏氏は、「少子高齢化が最も進んだこの国で、より長寿で長く健康を楽しめることを目指し、業界の垣根を越えてスピーディに新しい健康産業を立ち上げる、本日はそのきっかけになればと思う」と挨拶した。
【第1部:ヘルスケア展望】
■経済産業省 明石順子氏(商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 課長補佐)は「PHR に関する経済産業省の取組み」と題した講演で、PHR(パーソナルヘルスレコード)の活用について言及。
PHRの収集・活用により、疾病予防や健康づくりに役立つような仕組みを考えている。デジタルデバイスの進化により、活動量、睡眠、食事内容など個人のライフログデータが収集しやすくなり、これらと公的データを連携するなど、PHRを活用できる環境が整備されつつある。経済産業省は医療機関におけるPHRの利活用の実証調査事業を行っている。昨年の実証事業では健康に関する行動意識の変容が確認された。特に高年齢層や健康意識の高い人でその傾向が強かった。
なお、本年の「日常生活におけるPHRを活用したユースケース創出に向けた実証調査事業」では、太陽化学、セブン‐イレブン・ジャパン、セブン&アイ・ホールディングス、セブンドリーム・ドットコム、ドリコス、京都府立医科大学、広島大学のコンソーシアムを実証事業者として採択。身近な存在であるコンビニエンスストアで、PHRを活用することで健康を強く意識しなくても自然と健康が実現される社会を目指すという取り組みが進められる。
■セブン‐イレブン・ジャパン 青山誠一氏(取締役 常務執行役員 商品戦略本部長)は、「食と健康の商品開発」の講演のなかで、セブン‐イレブンの安心・安全への取組みと、ウェルビーイングに関する取り組みを紹介した。
セブン‐イレブンは、他のCVSと比べてフレッシュフード(おにぎり、弁当、日配等)の売上比率が高い。製造拠点の9割となる156工場がセブン‐イレブン専用品の製造という専用製造の高さが強みで、共通の原材料、共通のレシピ、共通の設備にすることで、衛生管理、品質管理、工程管理などのレベルを統一することが可能になった。
安心・安全な商品の提供と合わせて、ウェルビーイングの観点から健康や環境への配慮、地域社会への貢献も考えている。「みらいデリ」は工場栽培野菜を使用したサラダ。「スムージー」では健康と美味しさ、ウェルビーイングと環境負荷低減を両立した。23年7月に全国発売した「Cycle.me(サイクルミー)」は、時間帯ごとに摂取栄養(商品)を選ぶというコンセプト。
■セブン‐イレブン・ジャパン 山口圭介氏(執行役員 企画本部 みらい事業創造部長)は、「新たな価値を創出するための取組み」と題して、具体的な取り組み例を紹介した。
セブン-イレブンでは川崎市に1店舗、実証実験店舗を有する。「健やかな生活に寄り添う」をテーマに掲げ、新たなビジネスの創出に向けて動き始めている。コンビニの不健康なイメージを払拭しつつ、健康訴求を進めている。
ヘルスケアコンセプトストア構想として具体的には、健康的な商品の陳列、医薬品(OTC薬)の取り扱い、ヘルスケアデータの利活用―PHRの取得・活用、健康リテラシー向上などを掲げる。健康に良いものを食べたいという消費者層の願望に寄与していきたいと考えている。
【第2部:健康アプローチへの食の可能性~アカデミアの視点から】
■内藤裕二氏(京都府立医科大学 大学院医学研究科 生体免疫栄養学講座 教授)
新たに設立した「日本ガットフレイル会議」を紹介。年代問わず日本に蔓延しているガットフレイルの対策としての食のあり方を考えることでウェルビーイングを達成したい。
ガットフレイル対策として活用できるPHRとして、腸内細菌叢の解析、腸活アプリ、センサー付きトイレ、呼気分析など、すでにいろいろと活用されている。
京丹後の長寿研究で分かったことは、食の重要性。大豆製品が極めて重要で、根菜類の食物繊維も必要。腸内細菌が発酵しやすい食物繊維を選択する必要がある。
■太陽化学 安部綾氏(ニュートリション事業部 研究開発 所属長)
太陽化学では、働く世代の“快腸”なビジネスライフを実現するため、お腹の健康をサポートする「快腸ビジネスプロジェクト」を開始した。自社の社員食堂にグアー豆食物繊維のサプリメントを設置し、従業員の“腸の健康”リテラシー向上を進めた。また、みずほフィナンシャルグループの社員食堂では「次世代腸活フェア」が開催され、社員の腸の健康への理解度や、食物繊維の摂取意欲の高まりがみられた。お腹の不調が従業員の業務パフォーマンスに影響するという報告もあり、健康意識変化のきっかけと行動変容の機会を提供することで、働く世代のウェルビーイングな生活を応援する。
■阿部啓子氏(東京大学 名誉教授)
日本学術振興会の「食と未病マーカー委員会」では、「未病状態」(健康と半健康の間)を具体的に把握することで、各個人の健康状態の現状を認知し、それにより自分に適した機能性を持つ食品を選択して摂取する必要がある。委員会では食による未病社会の構築を目指し、それによりウェルビーイング社会に貢献していく。
栄養面では、一人一人に適した栄養素の摂取という「プレシジョンニュートリション」の考え方が重要になる。個人データを解析し、健康的な行動変容に寄与する食品を提案すべきで、それには多くの企業の連携が必要となる。
【第3部:パネルディスカッション】
「食の未来の共創のあり方」と題し、経済産業省 山中涼佑氏、セブン‐イレブン・ジャパン 大嶋健一氏、UnlocX 田中宏隆氏、ナインアワーズ 松井隆浩氏、太陽化学 田中宏明氏の5名が登壇。
PHRと購買データを掛け合わせることで個人に合わせたレコメンドやクーポン券などが考えられる、店舗でのサービスとしては体組成計やサプリメントサーバーの設置、カプセルホテルで収集した睡眠データを睡眠関連企業や大学に提供する、など、今後は異業種連携がキーワードとなり、共創により健康に寄与する新サービスの創出につなげ、健康寿命の延伸を目指したい、などの内容が語られた。
会場 ホール入り口には、「Cycle.me(サイクルミー)」の商品群や、太陽化学のグア―豆食物繊維や「サンファイバー」などが展示されていた。