クエン酸、リンゴ酸、乳酸等の有機酸は、清涼飲料水をはじめ加工食品の酸味付けや味の調節、pH調整などを目的に幅広く用いられている。ここ数年、食品分野での需要量に大きな変化はないが、昨夏は記録的な猛暑で飲料需要が高まり、今年は節電を意識した暑さ対策のための飲料ニーズも高いと思われる。しかし価格面では問題を抱えており、ここのところの穀物相場の上昇などが原料価格にも影響を及ぼしている。本稿では、国内外の各有機酸サプライヤーの動向に注目しながら市場での動きをみていく。
【主な有機酸サプライヤー】
●クエン酸
食品用クエン酸は酸味料として主に飲料などで利用される。昨年は記録的な猛暑により飲料市場が好調で、さらに炭酸系ドリンクの需要の高まりなどから、クエン酸も好調に推移。
●リンゴ酸
フルーティで爽快な酸味を呈するリンゴ酸。クエン酸との併用も多い。リンゴ酸ナトリウムは減塩や日持ち向上で利用。工業用も多く、様々な方面で利用されている。
●乳酸
乳酸Caは水溶性カルシウムとして飲料のカルシウム強化で、乳酸Naは日持ち向上などで利用が広がる。工業用では生分解性プラスチックとして環境面から今後のニーズに期待がかかる。
●酒石酸
酒石酸はワインの酸味調整や飲料・食品の酸味料として使われている。酒石酸水素カリウム(ケレモル)は膨張剤などで安定需要。ブドウ由来品と無水マレイン酸から工業的に作られる製品がある。
●グルコン酸・GDL
クエン酸と比較しておだやかな酸味を呈する。GDLは豆腐の凝固剤や膨張剤で利用。有機酸のなかでは唯一のプレバイオティクス。
●酸とカルシウムで味と日持ち向上
醸造酢と貝カルシウムを組み合わせたもので、呈味改良や食感向上、日持ち向上効果を持つ。