~3月10日(土)、11日(日)終日視察~
米国最大規模の健康・自然食品展「ナチュラル・プロダクツ・エキスポ2012」が3月9~11日、ロサンゼルス郊外のアナハイムコンベンションセンターで開催された。
昨年、この展示会は出展社数1,863社、小間数3,163と対前年5%増で最大と発表されたが、今年はさらにそれを上回り出展社数2,000社以上と過去最大となった。
米国の景気はそれほど良いわけではないが、リーマンショックの直後も米国の健康・自然食品市場は低迷することなく伸びており、景気回復の兆しが見えてきた現在、10%前後の勢いで健康・自然食品市場は伸びている。昨年は一昨年にも増して高い伸び率を示したということで、この勢いが展示会の活気に現れているといえよう。ちなみに米国の一般食品の市場は、ほぼ横ばいか減少傾向にあることを考えると健康・自然食品市場の伸びがいかに高いものであるか再確認できる。
出展社は米国企業が圧倒的に多いが、米国で商品を販売する海外企業の現地法人や海外からの出展社もあり、出展社別の国の数では100を超える数となっている。
日本からは伊藤園、あいや、葵製茶、むそう商事、坂本醸造、ヤクルト、森永乳業、サンジルシ、三菱ガス化学、太陽化学、白麦、マルコメ味噌、湧永製菓、八重山食品、日本生物.科学研究所、三生医薬、富士化学工業などが出展していた。
展示会はアナハイムコンベンションセンターの地上階ホールA~Dと地下ホールEの全館を使用しており、ゾーニングとしては「サプリメント」「ナチュラル&スペシャリティフーズ」「オーガニック」「ヘルス&ビューティ」「ナチュラルリビング」「ペットプロダクツ」「ホットプロダクツ」と素材の「ENGREDEA」に分かれる。
■ω3のさらなる伸長
サプリメントゾーン、素材ゾーンでともに目立ったのがω3で、これまでの循環器系訴求だけでなく、認知症、関節、スポーツなど様々な機能訴求が行われていた。また、消費者のナチュラル志向を受け、“Pure”や“オーガニック”などの表現で、有機溶媒を使用しないで抽出した製品であることを訴求したものも見られた。末端製品では、ソフトカプセルだけでなく、グミやチュアブルタイプの菓子、牛乳や豆乳、スムージーなどに添加された製品があちらこちらで紹介されていた。
■増えるキッズサプリ
ω3はもともと粉ミルクでも配合され、乳幼児に必要な栄養として認知されているが、脳や目の健康のために成長期にも積極的にω3摂取が有効として、親が子供に与える栄養成分として購入する機会が増えており、子供向けにはより飲みやすく、食べやすくしたω3入りグミや飲料、乳製品が数社から出されていた。
■肌だけでなく、髪、爪も含めた美容食品市場が台頭
日本でいう美肌のための食品は5~6年前まで米国市場では見られなかったが、日本市場の影響もあるのか、ここ数年米国でも「beauty from within」とか「beauty inside & out」とかいう訴求製品が見られるようになった。
サプリメントフーズでも美容を意識した訴求が数社で見られたが、こちらでは肌だけでなく髪とか爪を同時に考えているところが日本とは異なるところだ。
■シニアや子供のためのプロテイン強化食品が増加
日本でも現在、ロコモ対策やサルコペニア対策ということが騒がれ始めているが、米国市場では日本の概念より広範なシニア向けの運動機能訴求のための栄養素球がサプリメントや飲料で盛んにみられるようになっている。
今回の展示会でもシニア向けサプリや飲料を見かけたが、シニア向け製品という分類よりはスポーツニュートリションのシニア市場への拡大という様相だ。
■伸びているプロバイオティクス
ω3やビタミンDの市場の伸びに隠れがちだが、それらに負けず劣らず伸びているのがプロバイオティクスだ。この5年、平均20%以上の伸びをし続けており、米国市場ですっかり定番化した感がある。10年以上前までほとんど、米国市場では乳酸菌のマーケットがなかったことを考えると大きな変化である。プロバイオティクスの機能利用としては、消化器系(整腸作用)の健康維持がトップだが、免疫の強化も認知されて始めているようだ。日本では整腸作用というと便秘改善レベルだが、米国ではこちらで多い大腸がんの予防を意識する人も少なくないようだ。
今回の展示会場でもプロバイオティクスを訴求したパネルはあちらこちらで見かけたが、複数菌の組み合せや、新しい特性、機能を持った菌で差別化したものもあり、カプセルだけでなく飲料や乳製品など食品への配合製品も多くみられた。
■グルテンフリーがブームに
今回の展示会場で、最も目立ったフレーズを一つ挙げるとすると「グルテンフリー」だ。以前からグルテンフリー製品は市場に出されているが、これでもかというほどグルテンフリーのGFマークを見かけた。もともと米国市場には、グルテンに対するアレルギーや免疫拒否反応によるセリアック病の人が約10%ほどおり、グルテンフリー食品は必要不可欠な食品なのだが、最近は有名人により「グルテンフリーダイエット」なるものが紹介されたり、グルテンの体に良くないイメージが浸透し、正常な人でもグルテンフリーを選ぶ人が増えているという。会場にはグルテンフリーのGFマークがあちらこちらに見られたが、この認定マークの発行元であるNPO法人グルテンフリー協会「GFCO」も出展しており、現在どのくらいの製品が認定証を受けているのか聞いたところ、10,000製品に認定を出しているとのことだった。グルテンフリーの規格は、かつてFDAがレギュレーションとしてグルテン20ppm以下という規定をしていたというが、その製品を食べたセリアック病の人が発症したことで、FDAが訴えられFDAは現在そのレギュレーションを取り消しているところだという。国としての規格がない中で、同協会は独自に10ppm以下という規格を作り、これにパスしたものに認定マークを出しているという。
■体だけでなく地球、環境にもやさしく
グルテンフリーのフレーズをトップに、展示会場でも「non-GMO」「No Preservation」「No Artificial Colors and Flavors」「No Trans fat」「No MSG」「No HFCS」など体に良くない物が入っていないことを表示している製品(米国ではこれらを「Better for You」商品と呼ぶ)も数多く見られた。それらを使用していないことと同時に「Natural」「Pure」「Organic」などより自然、天然であることを訴求している商品が目立つ。
それらに加え、近年健康・自然食品業界でよく使われ始めている訴求ポイントが「Sustainable・Sustainability」、「Humane」(動物愛護)、「Fair Trade」、「Environment Friendly」「Green」「Locally Produced」などだ。自然・環境のバランスを考え、環境に負荷をかけないような栽培や製造をし、製品はできるだけ地産地消でというコンセプトだ。環境にやさしいというコンセプトは、健康・自然業界に限らず今や全企業の責任として捉えられているが、特に健康・自然食品企業では先に挙げたいくつかのキーワードとともに重要視されている。
■ブース拡大が顕著なSpecialty Foods
Natural&Specialty Foodsゾーンが昨年から本展示会のブース数拡大の起爆剤となっている。その背景としては、米国人の肉を主体とした外食中心から、変わりつつあるライフスタイルの変化が大きい。冷凍食品を主体とした電子レンジメニューというのが、不健康であるとの認識が広まりつつある。その中で出てきているのが雑穀(キヌア、アマランサス、アワ、ヒエ、キビなど)を使った各種のHome Meal Replacement(代替食品)製品群だ。同製品は、マクロビオティックやベジタリアンの考え方に基づいた素材・加工方法で作られたもので、「No Gluten」「non-GMO」は必須のもので、Ready to Madeな日本的に言うならば惣菜に位置付けられるものが多い。
■スーパーフルーツ、スーパーフードは顕在
オーガニックやナチュラルフーズのゾーンで目についたのは、スーパーフルーツやフーパーフーズといわれる食品原料を使った飲料だ。
スーパーフルーツは抗酸化機能を持つ果実:アサイー、ざくろ、ブルーベリー、マンゴスチン、ブラックカラント、タルトチェリー、プラム、マキベリーなどが代表で、これらの飲料や菓子、乾燥品が相変わらず多かった。また、栄養価が高い食品の総称として使われているスーパーフードでは、全粒穀類、ナッツなどを利用した製品の多さに加え、ケールや大麦若葉使用の青汁やジンジャーの砂糖漬け製品が目についた。
■「ホールフーズサプリメント」というカテゴリーが台頭
米国市場のサプリメントは、これまで特定成分を抽出して高濃度にしたものが好まれたが、最近は特定の物質だけを抽出して大量に摂るのではなく、食品の栄養素をまるごと摂るというホールフーズサプリというジャンルが確立しつつある。クロレラやスピルリナのようなものから、全粒粉、玄米、さらには植物抽出物であっても水抽出し成分がそのまま移行しているものまで概念はやや広いが、製品化にあたっては不要な添加物は使わず、天然素材で構成するというコンセプトにしており、有機原料を使ったものが多い。
■スナックやスイーツも健康要素満載
展示会場には米国人の好きなチップスやスナック、チョコクッキーなど、一見健康とは関係無さそうな食品があちらこちらで試食提案されていた。スナックやチョコクッキーを健康自然食品というのは日本人の感覚から理解できなかったが、そのパッケージに書かれているこだわりを見てようやくこれらの食品がこの展示会に沢山出されているわけが理解できた。例として、Food should Taste Cood inc.が出品していたオールナチュラルチップスは、Stone Groundコーンを使い、高オレイン酸のヒマワリオイルとハラペーノペッパー、ビートパウダーなどで味付けしたもので、パッケージの裏には「CERTIFIED VEGAN」(ベジタリアン認可)、「CERTIFIED GLUTEN RFEE」「ALL NATURAL」「CHOLESTEROL RFEE」「GOOD SOURCE OF FIBER」「NO TRANS FAT」「NO MSG」「CERTIFIED KOSHER」「EXCELLENT SOURCE OF WHOLE GRAINS」「NO GMO」「NO ARTIFICIAL COLORS, FLAVORS OR PRESERVATIVES」と11もの健康を表現する認可マークやアイコンが書かれていた。