(一社)Jミルクは、9月21日に都内で、第47回メディアミルクセミナーを開催。(一社)適塩・血圧対策推進協会 代表理事/生活習慣病予防研究センター代表の岡山明氏による講演が行われた。
【演題】乳脂肪をめぐる健康に関わるエビデンス:最近の動向
~牛乳乳製品摂取習慣と生活習慣病発症リスクとの関連性~
●日本人は脳卒中予防が大事
日本人(アジア人)は循環器疾患の中では、心筋梗塞などの虚血性心疾患にはなりにくく、脳卒中が主である点が特徴。心筋梗塞のリスクは、高血圧、喫煙、糖尿、脂質異常が4大危険因子とされるが、脳卒中ではこのうちの脂質異常はあまり影響がないと考えられている。
●牛乳には脳卒中の予防効果?!
牛乳に多く含まれる飽和脂肪酸は動脈硬化の親展に繋がるLDLコレステロールを上昇させる働きがあることが知られており、牛乳の過剰摂取が動脈硬化を促進させるのではないかという仮説があるが、ここ最近の研究でこの仮説が当てはまらないのではないかと考えられてきている。
世界の疫学研究をみると、牛乳・ヨーグルトを摂取することで高血圧と糖尿病のリスクを下げることが判明しており、脂質異常には影響がなかった(日本人データ)。なお、チーズやバターでは高血圧や糖尿病への影響はみられない(ニュートラル)。
牛乳と虚血性心疾患の関係を調べたメタアナリシス研究では、牛乳はニュートラルかやや予防的に働く。牛乳と脳卒中の関係では、東アジアでの研究を見ると、明らかに予防効果があることが調べられている。
●カリウムは健康ミネラル
カリウムは血圧を下げることが知られており、カリウムが不足すると高血圧や脳卒中にかかりやすくなる。日本人はカリウムの摂取量が少なくてナトリウムが多い。これは東アジア共通で、“ナトリウム・カリウム比”は東アジアがワースト3を占めている。これは乳製品を摂取する量が少ないからではないかとの見方もある。
塩分(ナトリウム)を減らすことで血圧は低下する。しかし、カリウムの多い食事を摂取することで、塩分を減らすだけより大きな効果が期待できる。
カリウムは野菜や果物に多く含まれるが、牛乳にも多く(200㏄中300mg)含まれている。WHOではカリウムは1日3.5g以上の摂取を推奨しているが、日本人は2gしか摂取できていない。カリウムの摂取量を増やすには、簡単に量を摂れる牛乳が適している。カリウムで問題となりがちなエグ味は、牛乳では感じないで摂取できるのも優れている点。
●ナト・カリ食品
高塩分食品の食塩の一部をカリウムに置換したのが「ナト・カリ食品」。ナトリウムを減らしてカリウムを増やせば、味付けが問題となりがちな減塩食品ではなく、塩味やおいしさが変わらない食品ができる。最近では3~4割の置換を目指しているところが多いが、カリウムのエグ味が目立たない2割の置換にすることで、味への変化がなく減塩が成立する。このナト・カリ食品を減塩戦略の土台にすることで、無理のない減塩を進められる。
●カリウムの健康効果に着目
牛乳とヨーグルトは血圧を下げ、糖尿病を予防し、脳卒中リスクを下げる。高齢者の食習慣の改善には牛乳を取り入れるのが効果的である。
(以上、編集部まとめ)