――ここでは雑誌に掲載した内容の一部を紹介いたします。
産学官連携による地域農・畜・水産物活用のための機能性食品開発研究を追う
シリーズ57
三拍子戦略を基本とした沖縄産健康食品のブランド力強化戦略
(公財)沖縄県産業振興公社 健康食品ブランド化推進基盤構築事業 プロジェクトマネージャー 照屋 隆司
はじめに
亜熱帯性気候の下、サンゴ礁海域や汽水域、深い原生林の存在、そして台湾やアジア大陸との近接性が、沖縄における多様で独特な生物種の構成を成り立たせている。また、東~東南アジア諸国と交流した琉球国大交易時代を背景に、医食同源思想を内に持つ独自の食文化を発達させ、多種類の薬用植物が生活の中で利用されてきた。
一方、壊滅的被害を受けた沖縄戦の後、復興期を米軍統治下に置かれたことで沖縄の産業基盤としての製造業振興は他県に比べ遅れをとり、現在でも全産業生産額に占める製造業の比率は全国最下位となっている。目下、製造業の振興は沖縄経済の発展のための必須課題であり、独自の薬用資源や食資源を生かした付加価値の高い産業の成長に期待の目が注がれている。
沖縄県の基本構想である沖縄 21世紀ビジョンは、かかる課題の解決策として、農林水産業、食品加工、観光等が連携・融合した新たな付加価値を「おきなわブランド」として創出し、優位な地域資源を活用した地域密着型産業の育成を企図している。本稿で紹介する健康食品のブランド力強化戦略は、同ビジョンの実現に向けた取り組みの一環である。
1.沖縄県健康食品産業の課題と新制度への対応
沖縄県健康産業協議会(平成 9年設立、現会員数 62社)の推定出荷実績総額はピーク時の平成 16年に約200億円であったが、その後減少し平成 20年以降は100億円弱で推移している。伸び悩みの原因としては、高まっていた沖縄ブームが落ち着く中、健康食品市場に大手メーカーが相次いで参入した上、表示規制が強化されたことにより中小零細企業の相対的競争力が一層低下したものと推察される。
沖縄において、独自の薬用資源や食資源に関する機能性開発研究を自力で行えるのはごくわずかな企業に限られている。県内業界の研究開発力強化は長年の課題であった。
トクホと異なり、平成 27年にスタートした機能性表示食品制度では、機能性表示の根拠を最終製品の臨床試験のみに求めず、既報論文のシステマティックレビューを根拠として用いることが可能になった。このことは、臨床試験への投資が難しい中小零細企業に、機能性表示の道をひらくものとして期待された。
機能性表示食品制度の施行に先立ち、沖縄県健康産業協議会は同制度のガイドラインを読み解き、業界としての対応策を協議した。その結果、沖縄が戦略的優位に立てる健康食品素材の機能性エビデンスの構築を県内の専門機関が実施し、これを業界内でシェアするという「機能性表示支援体制に関する試案」が平成 26年 10月にまとめられた。
―以下、続きは月刊『食品と開発』1月号にてご覧ください。
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