乳酸についての研究やスポーツ現場での利用など多角的な紹介を行っている「第14回 乳酸研究会」が2月17日(土)、都内で開催された。
主催:東京大学 八田研究室、協賛:コービオンジャパン、アークレイ
今回の研究会では、乳酸測定の原理から、臨床現場での乳酸についてのイメージ、脳での認知機能との関連、炭素の長期的な体内動態、ミトコンドリアとペプチドとの関連などの内容が発表された。
●乳酸測定の歴史と今~測定対象としての乳酸について~
アークレイマーケティング(株)上戸 潤氏
乳酸の測定法とその特徴、乳酸測定器と注意すべき点などを紹介。
●医療分野における乳酸に対する理解と利用
練馬光が丘病院 リハビリテーション室 髙橋勇貴氏
医師等医療従事者へのアンケートでは、乳酸を「疲労物質」とイメージする人が最も多く、医師も高い割合で信じていた。スポーツ分野で乳酸が利用されている事も約9割が「知らない」と答えており、臨床現場とスポーツ・研究分野との乖離がみられた。また、運動能力測定の際、特に高齢者では自転車やトレッドミルの利用が難しいケースもあるが、血中乳酸測定であれば容易に測定できると提案した。
●生体内乳酸シャトルのリニューアル~脳での役割~
立命館大学スポーツ健康科学部 スポーツ健康科学研究科 橋本健志氏
運動して血中乳酸が高まると、脳の乳酸の取り込みが向上する。認知機能の向上には中強度の運動で30分以上の運動が、脳の実行機能の亢進に良いという。またメカニズムとして、乳酸が増えるとアップするBDNFが実行機能に影響しているのではないかと考えられた。
●糖、脂肪酸、及びアミノ酸に含まれる炭素の体内動態について
環境科学技術研究所 環境動態研究部 増田 毅氏
炭素の長期的な体内動態に関する研究は今までされてこなかった。炭素の安定同位体を使った試験により、炭素排出には、糖、脂肪酸、アミノ酸のそれぞれで経路や時間の違いが出ることが分かった。呼気での排出が意外に多いという。
●運動によるミトコンドリアの適応を高める栄養素~タンパク質・ペプチド・アミノ酸の摂取効果に着目して~
森永乳業(株)研究本部 健康栄養科学研究所 松永 裕氏
乳酸を最終的に利用する器官であるミトコンドリアについて、運動とカゼインペプチドの併用により、ヒラメ筋のミトコンドリア酵素活性の向上が明らかになった。運動+カゼインとの比較でも高かった。また、BCAAの摂取により、トレーニング休止期間のミトコンドリア量の減少が抑得られており、それはBCAAを取ることでミトコンドリアの分裂と分解に関わるたん白質を抑制することで量を維持するということが分かった。