――ここでは雑誌に掲載した内容の一部を紹介いたします。
機能性食品開発のための知財戦略(6)
食品用途発明の最新報告〈2018年3月登録/公開〉
特許業務法人ユニアス国際特許事務所 パートナー弁理士 春名 真徳
2.今号注目の機能性
機能性糖質・糖類に関する用途発明
2018年3月28日施行の機能性表示食品のガイドライン改正により、主として栄養源(エネルギー源)とならない糖質・糖類が、機能性関与成分の対象として追加された。機能性を有する糖質・糖類は、特定保健用食品への展開の観点からも注目されている。今号では、機能性を有する糖質・糖類の用途発明の権利化について、これまでに本連載で抽出された成立特許や公開事例からいくつかを紹介する。
特許第6301024号
物産フードサイエンス株式会社
有限会社東海医学検査研究所
請求項1では、1-ケストースによる、「フィーカリバクテリウム属細菌増殖剤」が規定され、請求項2において、「腸内炎症の予防または治療」用途が規定されている。請求項5では、「1-ケストースを有効成分とするフィーカリバクテリウム属細菌増殖用食品組成物」が規定されている。1-ケストースは、難消化性糖質であり、エネルギー換算係数が2kcal/gであるため、エネルギー源とならない糖質に該当するものと考えられる。
本件特許の明細書によると、フィーカリバクテリウム属細菌は、菌体やその培養上清の投与によって、炎症状態を予防または改善できることが知られているため(複数の学術文献)、1-ケストースをヒトや動物に摂取させてその体内ないし腸内においてフィーカリバクテリウム属細菌の数を増加させることにより、腸内炎症を予防または治療することができることが説明されている(段落0029〜段落0030)。
本件特許の実施例においては、同社製の素材である1-ケストースの添加群が、ニストース、キシロオリゴ糖等のその他数種のオリゴ糖の添加群と比較して、顕著なフィーカリバクテリウム属細菌増殖作用を示すことを、in vitro試験により実証したうえ、乳幼児を対象にしたin vivo試験においても1-ケストース摂取の効果を実証している。
本件は、PCTルートにより国際出願され、国際調査報告(International Search Report、ISR)では、新規性や進歩性を否定する文献が挙げられていない。早期に日本へ国内移行手続を行ったうえ、早期審査の申請を行い、いわゆる一発特許査定となっている。
国際出願も行ったうえ、早期に日本における権利化に至っており、他国での権利化やビジネスの展開上、有利な点が大きいものと考えられる。
物産フードサイエンス株式会社の1-ケストースに関する用途発明について、本連載4月号において別の成立特許を抽出しているため、合わせて紹介する。
―以下、続きは月刊『食品と開発』6月号にてご覧ください。
ご購読をご検討の方は⇒ 購読に関する問い合わせ