――ここでは雑誌に掲載した内容の一部を紹介いたします。
産学官連携による地域農・畜・水産物活用のための機能性食品開発研究を追う
シリーズ61
ブラウンスイス牛肉を原料とした加工品の開発と肉質評価
(公財)とかち財団 [十勝圏地域食品加工技術センター] 川原美香
はじめに
(公財)とかち財団は北海道十勝における「農業を核とした地域産業の振興を支援し、地域産業の高度化と複合化を促進することで、活力ある地域社会の形成に資する」ことを目的に設立された。食品加工技術センターでは地場の多様な農畜水産資源の高付加価値化に取り組むとともに地域の大学、研究機関、金融機関、その他の関係団体と連携することで顧客ニーズに対する効果的な支援を念頭に業務を遂行している。本試験は産学官連携による取り組み事例として、「ブラウンスイス牛肉を原料とした加工品の開発と肉質評価」について紹介する。
1.ブラウンスイス牛とは
ブラウンスイス牛はスイス原産でアメリカにて乳肉労兼用種に改良された品種であり、固形分が高くコクのある乳が得られることからチーズ等の原料用途に評価が高い牛である。しかし、乳を生産しない雄の利用価値は低く、日本で食品として市場に出回ることは稀であった。近年、(有)コスモスでは若齢の雄牛を肉用牛として肥育する技術を確立し、ブラウンスイス牛(雄)についても肉用牛として活用することを可能とした。本試験はこのブラウンスイス牛(ブランド名:十勝ぼうや牛)の食肉種としての付加価値を高めるため、肉の特性を科学的データに基づき評価し、特性を考慮した加工品の開発を検討することを目的に実施した。
2.担い手企業について
担い手企業となる(有)コスモスは北海道、日高山脈の裾野に位置する十勝清水町にある。自社の農場である十勝清水コスモスファームでは豊かな自然環境の下、約2,400頭の肉用牛が飼育されている。北海道の肉牛飼育頭数500,000頭ほどのうち、ブラウンスイス牛はおよそ1,200頭(0.24%)であり、その希少数のうち肉用牛の飼育を一手に担っている。独自の飼育法として、成長段階にあわせて設計されたオリジナル配合飼料の給餌、1頭ごとのきめ細かい健康管理、牛にストレスを与えない飼育環境に配慮していることが特徴である。平成26年には十勝の肉牛牧場としては初の「農場HACCP」を取得し、安心・安全で美味しい牛肉の提供を公言するとともに、加工品へのブランディングにも挑戦しつづけている。
3.産学官連携体制の構築
本試験の実施にあたり、(公財)北海道科学技術総合振興センター(略称 ノーステック財団)のビジネス創出連携事業、地域プロジェクト創出支援事業の補助制度を活用し、原料生産状況調査から商品化、販売促進までをトータル的に支援できるような実施体制を構築した。具体的には担い手企業である(有)コスモス、ノーステック財団およびとかち財団で共同研究契約を締結し、定期的な検討会議の実施により業務推進を図った。
また、「十勝ぼうや牛」は過去に実需者、消費者から「ドリップが少ない」「赤身がやわらかい(噛み切りやすい)」「脂がしつこく感じない」「牛肉特有の臭みが無くて食べやすい」というコメントがあるという情報から、協力機関として牛肉の肉質評価に豊富なデータ蓄積を持つ国立大学法人 帯広畜産大学(生命・食糧科学研究部門 日高教授、平成27年当時)の支援を受け、肉質の科学的根拠となるデータを取得した。商品化では各機関が持つネットワークからコラボ参画事業所を選定し、事業実施の効率化を図った。
――以下、続きは月刊『食品と開発』8月号にてご覧ください。
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