(公財)ヤクルト・バイオサイエンス研究財団が主催する「第27回腸内フローラシンポジウム」が、26日に都内で開催された。今回のテーマは「腸内フローラとディスバイオーシス(バランス失調)」
ヤクルト・バイオサイエンス研究財団⇒ http://yakult-bioscience.or.jp/
シンポジウムについて⇒ http://yakult-bioscience.or.jp/sympo.html
腸内細菌叢が乱れてそのバランスが崩れる(ディスバイオーシス)ことが、様々な疾患の要因となることを、各講師が様々な切り口や研究成果を発表しながら解説した。
●特別講演1
「腸内細菌による免疫修飾」
本田賢也氏/慶應義塾大学医学部 微生物学・免疫学
●特別講演2
「抗菌薬耐性微生物に対する耐性を持つ共生細菌の同定」
Eric G. Pamer氏/メモリアルスローン ケタリングがんセンター 米国
●講演1
「ディスバイオーシス、腸内フローラ・脳・腸連関とメンタルヘルス」
Christopher A. Lowry氏/コロラドボルダー大学 米国
●講演2
「腸管外現象に影響を及ぼす特定の乳酸菌」
金井隆典氏/慶應義塾大学医学部 内科学〔消化器〕
●講演3
「口腔微生物叢と歯のケアが腸内微生物叢に及ぼす影響」
花田信弘氏/鶴見大学歯学部 探索歯学講座
●講演4
「ヒト腸内フローラの個体レベル研究と臨床研究:定量的フローラモニタリングの必要性」
Jeroen Raes/KUルーベン-VIB微生物学センター ベルギー
●講演5
「腸内フローラのdysbiosisとプロバイオティクス・シンバイオティクスの応用」
朝原 崇氏/ヤクルト本社中央研究所
慶應義塾大学医学部の金井隆典氏は、腸内細菌が腸管以外の臓器の疾患に影響する点について言及。氏の研究グループでは、ラクトバシラス属の腸内細菌が皮膚や肝臓に影響を及ぼす事例を見出した。その事例として、腸内細菌とビオチンと脱毛の関係を紹介。マウスを使った試験で、ビオチン欠乏食+VMC(グラム陽性菌に対して抗菌作用を示すバンコマイシン)のマウスでは脱毛が起こり、そのマウスの腸内細菌叢を調べると、ディスバイオーシスを起こしており、L. murinus(ネズミにはあるがヒトは持たない)が極めて多くなっていたという。氏はもう一例、L. johnsoniiが肝臓においてIL-10/TGF-β産生樹状細胞を増加させ、肝臓免疫寛容を誘導することも紹介した。