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【11月号連載】機能性食品開発のための知財戦略(11)
食品用途発明の最新報告〈2018年8 月登録/公開〉

――ここでは雑誌に掲載した内容の一部を紹介いたします。

機能性食品開発のための知財戦略(11)
食品用途発明の最新報告〈2018年8 月登録/公開〉
・今号注目の機能性─記憶等の脳機能向上の用途発明
特許業務法人ユニアス国際特許事務所 パートナー弁理士 春名真徳

本号では、2018年8月1日〜8月末日までに特許公報の発行又は公開(再公表)された特許案件についての紹介を行う。

10月号より、成立特許リスト(表1※ここでは割愛、雑誌には掲載)において、情報提供回数の項目を追加した。情報提供制度とは、簡潔には、特許庁に対して匿名で行える、他社特許の権利化を阻止するための制度である。情報提供回数が多い案件は、それだけ競合他社への影響力が高いことを間接的に示している。

また、10月号より、公開公報リスト(表2※同上)において、国内出願による公開特許公報だけでなく、日本語でなされた国際出願による「再公表特許公報」も対象に加えた。これにより、国内企業案件の海外への展開も確認することが可能となる。

2.今号注目の機能性
記憶等の脳機能向上に関する用途発明

表1 及び表2にて集計した事例では、[脳機能向上]に関する用途発明が多く抽出されたため、これらの事例から特に記憶に関連性の高いと考えられるものについて紹介したい。

消費者庁の機能性表示食品の届出情報検索では、記憶に関する届出表示を行う商品が約120件登録されており、これは、全体の約8%に該当する。特に商品名に「記憶」に関するワードを有する商品における機能性関与成分としては、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イチョウ葉由来フラボノイド配糖体、イチョウ葉由来テルペンラクトン、大豆由来ホスファチジルセリンが挙げられる。

特許第6375296号 ライオン株式会社

請求項3において、「ドコサヘキサエン酸とカプサンチンとルテインとゼアキサンチンを含有する、脳機能改善用食品組成物」が規定されている。

この請求項3は、対象分野を「食品」に限定しているが、本件特許の明細書では、医薬品等にも利用できることが記載されている。請求項1では、対象分野を限定せず、「ドコサヘキサエン酸とカプサンチンとルテインとゼアキサンチンを含有する、脳機能改善用内服組成物」と規定されている。

食品分野での権利活用(特許表示など)が想定される場合は、本件特許のように、食品に対象分野を限定した請求項を設けておくことが好ましい。また、食品に対象分野を限定した請求項では、食品において商品アピールが可能な機能性文言に準じて、用途を規定することが推奨される。食品に対象分野を限定した請求項において、食品の分野を逸脱し、医薬品に向けられるような用途を規定することは避けるべきであると考える。

「脳機能改善」との用途について、どのような脳機能が対象となるのかは、請求項の記載だけでは明らかではない。この点について、本件特許明細書の段落0027では、以下のように説明されている。

「脳機能は、認知機能と言い換えてもよい。脳機能は、通常、判断、計算、記憶、理解、学習、思考、言語などの脳内の情報処理によって実現する機能を包括した、脳の高次機能を表す。脳機能改善とは、上記の脳機能、すなわち認知機能が改善されることである。」脳機能について、医薬や食品の枠にとらわれず、広く捉えた定義であり、参考になる。

――以下、続きは月刊『食品と開発』11月号にてご覧ください。
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