11月12日に都内で開催された第48回メディアミルクセミナーでは、女子栄養大学栄養生理学研究室 教授の上西一弘氏が、「牛乳乳製品と骨の健康~今日の栄養学的価値~」と題した講演を行った。講演では、カルシウムの必要量や摂取の現状などを踏まえながら、最新の調査研究結果菜などを披露した。
●骨粗鬆症予防のためには
・成長期に最大骨量を増やしておく。特に中学生の時期は一番カルシウムを摂る必要がある。30歳を過ぎると骨にカルシウムを蓄積するのは難しい。
・成人期には、骨量を増やすとともに、毎日失われていく量を考えて骨量を減らさないように摂取する。日本人の食事摂取基準(2015年版)における成人のカルシウムの推定平均必要量は、尿中排泄量や経皮損失量を加味し、カルシウムのみかけの吸収率(25%)から計算される。カルシウム摂取の目安となる「推奨量」(成人(30~49歳)の場合は650mg)は、それに安全率(20%)をかけた数値。
・女性の場合は閉経期の骨量減少を少しでも抑える。
・高齢期では骨量減少を抑えるとともに、骨折予防も大切。
・骨量を高め、維持するために大切なのは、バランスの良い食事、骨となる栄養(カルシウム、ビタミンD)の十分な摂取、運動すること。
●最近の話題―以下のような研究データが紹介された
・乳製品の摂取量が少ないと、骨折しやすい
・日本人では、カルシウム摂取量が少ないと骨折リスクが高い
・学校給食で牛乳がある日とない日では、カルシウム摂取量に違いが出る(牛乳がある日の方が多い傾向)
・給食形態別(完全給食、ミルク給食、給食未実施)でみると、小学5年生の場合も中学2年生の場合も、踵骨骨密度は完全給食の者のほうが高い
・牛乳・乳製品を多く摂取する群の方が、認知症発症率が低い
●牛乳を飲む機会を増やそう
・カルシウムは吸収率が悪いが、牛乳のカルシウムのみかけの吸収率は高い。上西氏の紹介したデータでは、牛乳39.8に対し、小魚32.9 野菜19.2 であった。効率良いカルシウム摂取には牛乳が最適。
・牛乳はカルシウムだけでなく、ビタミンB2、ビタミンB12、パントテン酸、リン、カリウムなども多く、様々な栄養素の供給源となる。
・カルシウムの摂取を増やすには、できるだけ牛乳を飲むチャンスを増やすことが大事で、家で牛乳を常備することも効果的。