多機能タンパク質であるラクトフェリンの玉不足が長期化する様相を呈している。
近年急増したアジア市場の育児粉乳向けや健康食品、ヨーグルト向けへの手当てがその理由のひとつ。中国のラクトフェリンの品質規格が厳しいこともあり、高含量のものを中心に玉繰りが悪化し、さらに米国大手育児粉乳メーカーからの引合いなどの情報から、国内外で需給がひっ迫する状況に陥っている。
直近の国際相場は平穏時の2~3倍以上と“お断り”に近い価格となっているものの、中国からの引合いは引き続き旺盛。対応が後手に回った国内市場は割を食うかたちとなり、新規のみならず、既存の顧客へも手当てもままならない状態が続いている。中国以上の引合いが予想される米国からの新規需要がカギを握っており、こうした状況が2020年以降も続くとの声が上がっている。
ラクトフェリンは、母乳のほか、唾液などに含まれる鉄結合性の糖タンパク質。日本ではラクトフェリンが有する免疫調整作用や抗菌・抗ウイルス作用、ビフィズス菌増殖作用、鉄吸収調節作用、抗炎症作用、脂質代謝改善作用など様々な効果を活用した商品化が進んでおり、食品以外での応用も期待されている。最近では森永乳業がヒトノロウイルスのヒト細胞への感染を抑制する旨の研究成果を公表している。
牛乳中に含まれるラクトフェリン含量は非常に少なく、牛乳1万Lから生産できるラクトフェリンはわずか1㎏。高度な技術力が必要であることから、メーカーも限定されてきた。4年前に中国の育児粉乳向けなどで相場が急騰した際は、森永乳業の関連会社である独・ミライ社をはじめ、フォンテラやグランビアなど有力乳業メーカーが増設したほか、NZタツア社の技術を導入した豪・ワーナンブルーチーズ社なども生産に乗り出し、玉不足といった深刻な状況を回避した経緯がある。
今回も中国の育児粉乳向け市場が主な舞台となっており、昨年前半から相場が上昇してきたが、米国からの引合いがクローズアップされた昨年半ばからさらに急騰。世界需要推定200~300トンのうち、日本国内需要(推定50~60トン)に匹敵する新規引合いが予想されており、各社の増設などで対応するにしても、時間が掛かるとみられる。日本市場でも各国に買い負けしない注文を出さなければならず、玉も絞られている状況で国内価格も国際相場に応じた取引となっている。