ネスレ日本と京都府が設立した「抹茶と健康研究会」は、3月7日に都内で公開セミナーを行い、抹茶に関する科学的な研究により新たに発見された「抹茶のチカラ」について発表した。
まず基調講演として、農研機構 食農ビジネス推進センター センター長の山本(前田)万里氏が、抹茶に関する概要と機能性研究について解説。抹茶と煎茶は栽培や製法、含まれる成分も違い、茶カテキンやカフェイン、テアニンの量は煎茶と比べ2倍以上にもなる。茶葉をそのまま摂取することで、煎茶では摂取できない食物繊維やルテインなども摂取できると紹介。17年に研究会が採択した6件の助成研究では、腸内フローラ改善、肌の保湿、ストレス緩和、トレーニング時の筋力増加、視覚機能への影響、睡眠への影響が調べられたと語った。
公開セミナー第1回となる今回は、その助成研究の成果として腸内フローラ改善と肌の保湿に関する2題が発表された。
京都府立大学大学院 生命環境科学研究科 講師の井上 亮氏は、抹茶の腸内フローラ改善についての研究結果を発表。健康な成人を対象とした2週間の抹茶摂取試験で、糞便サンプルのメタゲノム解析とアンケートを行った。すると、抹茶摂取群では腸内細菌叢の全体構成の変化がみられ、善玉菌(Coprococcus)の増加と、悪玉菌(Fusobacterium)の減少が確認された。
株式会社ANBAS代表取締役・大阪大学名誉教授の永井克也氏は、抹茶と肌の健康について紹介。抹茶は経口投与、十二指腸への直接投与の両方で皮膚動脈交感神経を抑制し、皮膚の血流を増加させたデータを紹介。興味深いことに、これらはミキサーで攪拌した抹茶よりも茶筅で点てた抹茶の方が、効果は強く出ていた。また、抹茶摂取2日目から経費水分蒸散量を低下させた(肌の保湿効果改善)。
「抹茶と健康研究会」は、京都府とネスレが2016年11月に締結した「宇治抹茶の振興に関する連携協定」のもと、「抹茶と健康のイメージ向上」を推進する取り組みの一環として設立されたもの。科学的エビデンスの蓄積や、抹茶と健康に関する研究・啓発活動を行っており、17年より基礎研究・応用研究の助成をスタートし、6案件が採択されている。