食品工場の排水処理設備は様々なシステムが用いられている。施設の数だけシステムがあると言っても過言ではない。現場ごとに異なるシステムが多種多様採用されているが、共通しているのは維持管理の難しさであろう。ゴーダ水処理技研がリリースした「水ドクター」は、同社が30年にわたりコンサルティングしてきた様々な現場実績と経験、計測データに基づき、適正な活性汚泥管理を可能にしたアプリだ。
今回は水ドクターの開発を手掛けた同社代表取締役 江田敏久氏にインタビューし、開発・商品化に至るまでの経緯やアプリの特長、今後の計画などについて話を聞いた。
水処理技術者の学校を作りたかった~スキルのサポート
―まずは「水ドクター」の開発の経緯から伺いたいと思います。
江田 私は30年にわたり数百件もの処理施設の管理担当者や経営者と共に水処理対策に
悩み苦しんできました。と同時に勉強もさせていただいてきたわけです。開発してきた運転
維持管理技術の蓄積をどうにかお客様に還元できないものか。私はかねてから水処理技術
者のための学校を作りたいという想いを抱いていましたが、水ドクターは言わばその想いの具
現化です。
―技術者養成のためということですか?
江田 水処理管理は熟練の経験と観察力・分析力がものをいう世界です。一朝一夕にはできません。一方で素晴らしい管理技術を持った人の後継者が育っていないのが現状です。昨今の人手不足を背景に、水処理専任者を置けない企業も増えています。そのため、現場にトラブルが発生するたびに高額なコストを掛けざるを得なくなります。なぜなら現場経験者に頼っていた管理を外部委託せざるを得ないからです。ならば水処理管理に欠かせない経験とスキルを私たちが身近でサポートするシステムを構築すればお客様に貢献できるのではないか? それが水ドクター開発の発端です。
誰でも1秒で対策がわかる~アプリ使用料は月5万円
─では水ドクターの概要についてお聞かせください。
江田 水ドクターはこれまで30年の実績と蓄積したデータを整理し、10,000通り以上のパターンから計測データに基づいて、およそ1秒で活性汚泥の健康状態を診断して適切な処方すなわち管理方法を導き出します。私たちも体調を崩した時は病院を訪れてドクターが数分の診察で病状を見極めて診断し処方してくれますよね? 病状が診断されれば処方は明確になります。活性汚泥の現状分析を15パターンに解析し、診察→診断→処方→予測の流れをシステム化したのが水ドクターです。
─アプリの詳細と機能についてお聞かせください。
江田 まずは、支給させていただくタブレットに日々の計測データカルテを入力いただくと、水ドクターが10,000通りの計測パターンから現状と同じものを検索します。1秒で活性汚泥の健康状態を15パターンの1つに診断を下し処方を行います。しかし水ドクターの処方通りにすれば終わりではありません。処方とは、活性汚泥が健康に戻るために環境を修正することです。つまり処方を維持することは、健康を中心として今と反対方向の不健康状態へと行き過ぎることを意味しています。アプリの予測機能では、その後に計測される注意すべき事項が明記されます。
また、過去の診断結果を一覧表で確認できます。週内曜日別の傾向、月内週別の傾向、季節別の傾向等も同時に捉えることもできるので、例えば週末に管理者がお休みをしたい時にも役立ちます。過去のデータをワンタッチでグラフ化することもできます。日々の計測管理表だけでは不足する視覚的な管理報告も可能となっています。
─具体的なメリットを挙げるとすると?
江田 管理者にとってのメリットは大きく3つ挙げられます。1つが「維持管理の安定化」。活性汚泥の診断処方が毎日適切にできますので、常に安定化して安心な管理休日が約束され、担当者間の引き継ぎも円滑になります。次に「処理能力の向上」。健康な活性汚泥維持が実現できるので、100%の浄化力を引き出すことで処理能力が向上・維持できます。そして3つめは「糸状性細菌の抑制」。活性汚泥が健康状態で維持されていれば、糸状性細菌が優勢になりバルキング現象や膜処理不良、脱水不良などは発生しません。
─コスト削減につながれば経営者のメリットも大きいですね?
江田 活性汚泥の健康状態を診断してその状態に合わせた処方管理を適正に行うことで、酸素供給のための電気代が10〜30%削減が可能になり、薬剤費も10〜50%の削減が可能です。また、活性汚泥が健康状態で維持されていれば含水率の高い脱水汚泥が発生して産廃量が増加することもありません。10〜50%の汚泥産廃費削減も可能となります。
─アプリ使用料は月額5万円と低価格設定ですが導入リスクは?
江田 追加設備や装置、酵素資材や微生物資材など導入に掛かる新たな費用は一切ありません。もちろん水ドクターのシステム導入にもリスクは一切ありません。なぜなら活性汚泥の環境管理を適正にするためのソフトを導入するに過ぎないからです。環境管理の処方=対策が示されますが、その処方を100%そのまま導入する必要はありません。担当者自身の経験と照らし合わせて、処方を信じられる範囲で対策を実施すればいいのです。徐々に目の前で起きる現場変化が、診察→診断→処方→予測と合致してくるのがわかるはずです。
─発売開始以降の反響と今後の目標は?
江田 価格については大きな反響がありました。これは水処理の分野で30年以上勉強させていただきお世話になった恩返しの意味もあります。現在、上場企業を中心に約200社の企業にモニターになっていただいております。某大手食品会社様では今年の3月までの7か月間でおよそ300万円の経費削減を達成するなど、いずれも好結果が報告されており確かな手応えを感じています。今期中に1,000件の受注を目標にPRを展開して参ります。