三菱商事ライフサエンスは、自社が保有するトルラ酵母(Candida utilis)を用いた in vitro 試験で食後血糖および血中中性脂肪の上昇抑制効果を持つ可能性を確認した。
トルラ酵母は、RNAやグルタチオンを多く含む酵母エキス製造にも使われる食経験豊富な酵母。トルラ酵母には酵母細胞壁由来の食物繊維が多く含まれており、食後の血糖や血中中性脂肪の上昇抑制効果が期待されることから、今回、糖代謝や脂質代謝に与える影響を検討した。
試験は、トルラ酵母をグルカナーゼで処理した後、粉末化した素材を用いて検証。グルカナーゼ処理条件の異なる3種の試料について、物性(可溶化率、粘度)を確かめた後、糖質消化酵素(α-アミラーゼ、α-グルコシダーゼ)および脂質消化酵素(膵リパーゼ)活性阻害と胆汁酸の吸着能について検討を行った。
その結果、可溶化率や粘度の異なるいずれの試料においても、α-アミラーゼには効果はないものの、α-グルコシダーゼおよび膵リパーゼの活性阻害効果が確認され、また胆汁酸の吸着能を有することも判明した。α-グルコシダーゼの阻害は糖、膵リパーゼの阻害と胆汁酸の吸着は脂質の分解、ひいては吸収の遅延に寄与するといわれていることから摂取により食後の血糖や血中中性脂肪の上昇が抑制される可能性が示唆された。この研究結果は、8月29日から開催される「日本食品科学工学会第66回大会」で発表する。
現在、同社ニュートリション事業部で、微生物による発酵技術を中心とした健康機能に関する研究開発を進めており、今回のトルラ酵母に関する研究についても、引き続きヒトでの効果を検証中。今後、機能に関与していると推測される成分(食物繊維等)に着目した検討を行っていく予定である。