デュポン ニュートリション&バイオサイエンスでは、11月21日に都内で「より充実したシニアライフを送るための食品・飲料開発」と題したセミナーを開催した。
第1部 消費者からみるシニア層の食品消費傾向について
デュポン ニュートリション&バイオサイエンス マーケティングマネージャー 市川卓
今回は新しいテーマ「スマート・エージング」をコンセプトに、シニア市場についてみていく。高齢者マーケットはリーディングカントリーである日本の動向を世界が注目している。
1)デュポンが独自に行った消費者調査(n=2,000、9/10~12)では、シニアの健康意識は高く、運動に対する意識も高くなっている。健康であるために食品の選択が変わってくる。例えばヨーグルトは若い女性のイメージだが、日本では男性50代の摂取率が若い層よりも高くなっている。アクティブシニアが身体の機能低下を防ぐための食品選択が今後も進むと思われる。
2)嚥下力は、低下したことに気づきにくい。喉の機能低下は40代から始まるが自覚しにくく、誤嚥性肺炎を起こしてから嚥下障害に気づくケースが多い。ここに1つの課題があり、低下した嚥下力に対応した、摂取しやすい食品が必要となる。
3)シニアならではの感情の起伏。環境の変化や心理的要因で、感情のコントロールがしにくくなる。うつにも注意。
シニアは健康面、精神・心理面、社会・環境面のそれぞれで気づかないうちに機能が低下し始めていく。より充実したシニアライフを送るためには、それを補うための食品、例えば飲み込みやすい食品、健康維持・予防を考えた食品、気分に応じた食感、など新たなアプローチが必要と考える。
第2部 ミドルからシニアに求められる栄養と課題
武庫川女子大学 生活環境学部 教授 雨海照祥
令和元年、高齢者率は28%となり、さらに、65~74歳より75歳以上の方が多いという史上初の超高齢社会となった⇒「令和型 超高齢社会」本年9月にはサルコペニアの診断基準が変更された。今までの筋肉量測定から、筋力の測定(握力など)に変更された。
フレイルの年齢別人口分布をみると、65歳以上では75歳をピークとするが、65歳以前からフレイルは始まっている⇒「かくれフレイル」。フレイルの予防には筋肉を落とさないのがポイントとなるが、その対象は、高齢者はもちろんだが、それ以前の年齢においても必要となる。
また、身体的フレイル(サルコペニア)だけでなく、「こころのフレイル」や「社会的フレイル」も併せて考える必要がある。生活習慣病のフレイル合併率は高く、特に高血圧や糖尿病、メタボで高い。
サルコペニア フレイルでは栄養面において重要になるのが、エネルギー、たん白質、コラーゲン・ペプチド、ビタミンDなど。フレイル対策をする上で、たん白やビタミンなど「攻めの栄養」管理も必要となる。
第3部 研究結果からみるシーンに応じた食感とレオロジー(流動)サイエンス
デュポン ニュートリション&バイオサイエンス リージョナルプロダクトマネージャー 加藤和子
「スマート・エージング」に対してテクスチャーの面から何ができるかを考えている。高齢者は様々な器官を動かすための筋力が低下するが、嚥下に注目すると「嚥下するための筋力の衰え」が問題となる。むせの経験は、70歳以上で25%ぐらいある。嚥下力の低下に気づいてない人が多い→パイがまだある(市場性)
この衰えに対応するため、食塊の流速を遅延させるようなテクスチャーコントロールが必要となる。食塊の流れが速いと咽頭蓋が閉じる前に食塊が通り過ぎるため、誤嚥のリスクが高くなる。理想的なテクスチャーとしては、ひと塊になる物性、粘度・粘弾性、ゆっくりとした流動性、が挙げられる。
デュポンは、レオロジー(流動性)とセンサリー(感応特性)に着目。粘弾性はせん断速度によって得られる値が違うため、粘度測定だけではテクスチャーは決められない。デュポンでは様々なハイドロコロイド製品を揃えており、製剤やアプリケーションも揃えている。キサンタンガムを使ったとろみ剤の使用など、嚥下のマーケットは日本が先行しており、米国ではスターチがメインであるし、欧州でキサンタンガムを使うようになったのは日本よりかなり遅れてのこととなる。
また、食品の選択は気分が大きく関係する。気分により食品を選択することもあり、選択した食品によって気分が左右されることもある。
第4部 アクティブシニアの消費者像と令和のシニアトレンド
世代・トレンド評論家/経営学修士(MBA)、インフィニティ代表取締役 牛窪恵
独自の調査で分かったシニアの実態、世代ごとの特徴などを紹介しながら、消費意欲が高い団塊世代と団塊ジュニアに焦点を当て、これからの消費、シニアの健康と労働力などについて解説した(以下、内容をかいつまんで紹介)
現在60代の9割は「シニア」と呼ばれたくないと思っている。
消費については60代以上のインパクトが高まっており、消費意欲が旺盛。
シニアをターゲットとする施設も増えた。
デジタルにも親しみ、SNSによる口コミ、アマゾンの利用、youtube閲覧など積極的。
団塊世代+団塊ジュニアがマーケットのボリュームゾーンになる。
2025年には団塊世代が後期高齢者となり、病院のベッド数が全く足りなくなるため、政府は在宅で介護を考える方針に切り替えている。
同時に労働人口も不足⇒女性、外国人、さらに、シニアへの期待が高まる。
働き続けるためにも「健康」が重要となる。
定年退職後に新たなチャレンジを始めるシニアも多い→この場合も大切なのが「健康」
インターネットショッピングで使う金額が多いのは60代。20代女性の3倍で、毎月の健康食品の購入が要因とみられる。
これからは、女性シニアのおひとり様が増えていく(オトナパラサイトの増加)、これからの主役はアクティブシニアである。