太陽化学や京都府立医科大学らの研究グループは、グアーガム酵素分解物(PHGG)が腸肝軸を介して脂肪性肝疾患(NAFLD)モデルマウスの肝疾患の進行を抑制することを明らかにし、医学分野の学術誌「World Journal of Gastroenterology」に発表した。
研究は、動脈硬化食を摂取させて低濃度の硫酸デキストラン負荷により腸管バリア機能が破綻したNAFLDモデルマウスを対象にしたもの。マウスにPHGGを摂取させ、肝機能マーカー(AST、ALT)、肝組織、肝臓のミエロペルオキシダーゼ活性、肝臓の遺伝子発現、門脈中のエンドトキシン、腸管バリア機能、腸内細菌叢や代謝物などに与える影響を調べた。
結果は、PHGGの摂取により、腸管バリア機能が維持され、エンドトキシンの腸管からの流出が抑制された。また、肝臓への脂肪蓄積および肝臓の炎症が抑制され、肝臓の炎症や繊維化に関わる遺伝子の発現が低下し、肝機能マーカーが改善した。以上のことから、PHGGは腸肝軸を介してNAFLDの進行を抑制する可能性が示された。
最近増加が懸念されているNAFLDは、主に肥満やメタボリックシンドロームに伴う肝臓への脂肪蓄積によって引き起こされる。近年では腸肝軸の関わりについて報告されており、腸管バリア機能の低下により腸内細菌由来成分(エンドトキシン)が血液中へ流出し、肝臓に到達して炎症を引き起こし、NAFLDの憎悪に関わると考えられている。
水溶性食物繊維であるPHGGは腸内細菌叢を改善して腸内環境を整えることに加え、腸管バリア機能を高める作用も報告されており、NAFLDに対する有効性が考えられていたが、今まではその効果が明らかにされていなかった。今後はヒトでの検証が必要となるが、今回の研究成果は腸肝軸をターゲットとした新たなNAFLDの予防法や治療法の開発につながると期待されている。
■発表雑誌
雑誌名 : World Journal of Gastroenterology
論文名 : Partially hydrolyzed guar gum attenuates non-alcoholic fatty liver disease in mice through the gut-liver axis
著者 : Shun Takayama, Kazuhiro Katada, Tomohisa Takagi, Takaya Iida, Tomohiro Ueda, Katsura Mizushima, Yasuki Higashimura, Mayuko Morita, Tetsuya Okayama, Kazuhiro Kamada, Kazuhiko Uchiyama, Osamu Handa, Takeshi Ishikawa, Zenta Yasukawa, Tsutomu Okubo, Yoshito Itoh, Yuji Naito
掲載日 : 2021年5月10日