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日本食品標準成分表2020年版(八訂)に関わる食品表示基準や分析等の課題を整理  事業者の実行可能性や対応方策を取りまとめーー消費者庁

消費者庁は10月27日、「食品表示基準における栄養成分等の分析方法等に係る調査検討事業報告書」を公表した。文部科学省が昨年12月に公表した「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 を踏まえ、食品表示基準及び分析等通知等に関する課題を整理し、対応方策の検討を行ったもの。成分表2020年版(八訂)では、エネルギー計算方法の変更(表)を含む全面改訂を行っている。消費者庁では、委託先の国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所を通じて有識者による検討会、ワーキンググループを設置し、食品表示基準及び分析等通知との関係を整理し、事業者の実行可能性や都道府県等における検証可能性も踏まえつつ、対応方策を報告書として取りまとめている。

「成分表2020年版(八訂)」では、熱量の計算式が、たんぱく質、脂質、炭水化物等の量にアトウォーター係数等を乗じて算出する従来の計算式から、アミノ酸組成に基づくたんぱく質、脂肪酸組成のトリアシルグリセロール当量で表した脂質、利用可能炭水化物(単糖当量)等の組成成分値に各成分のエネルギー換算係数を乗じて計算する新たな熱量計算式に変更。①炭水化物の一部として4kcal/gで熱量計算されていた食物繊維が2kcal/gで計算されるよう変更、②酢酸に加えて、他の全ての有機酸をエネルギー産生成分として取扱う、③きのこ類及び藻類の熱量計算において、アトウォーター係数による総エネルギー値に0.5を乗じる措置が廃止、などがある。

炭水化物の分析方法の場合、成分表2015年版(七訂)では、熱量の算出基礎に用いられる差引き法によって算出されていたが、成分表2020年版(八訂)では、原則としてエネルギーとしての利用性に応じて炭水化物を細分化し、それぞれを直接分析又は推計した「利用可能炭水化物(単糖当量)」に変更されている。

報告書では、利用可能炭水化物(単糖当量)は、従来法による炭水化物よりも摂取した際の熱量を正確に反映する成分値であるが、でん粉、ぶどう糖、果糖、ガラクトース、しょ糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース、イソマルトース、80%エタノールに可溶性のマルトデキストリン及びマルトトリオースなどのオリゴ糖類の個別定量を要するため、実行可能性は低くなる。よって、炭水化物は、利用可能炭水化物(単糖当量)の量ではなく、引き続き、差引き法によって算出された炭水化物の量を規定の方法で得られた値とし、それを熱量算出に用いる、とした。

今後の課題としては、国民の健康への影響が大きく、かつ、消費者からの関心も高い熱量に関係する利用可能炭水化物 (単糖当量)の量と、規定の方法により得られた炭水化物の量との整合について、実行可能性及び国際整合性を勘案しつつ、引き続き検討を要する、としている。

また、栄養成分等の分析方法等については、一般的な食品試料を想定しており、栄養成分表示に「0」と表示されたものや、食品添加物そのもの等、一般的な食品試料より極端に濃度が低い又は高い試料の分析には適さない場合があり、分析等通知に記載された、試料採取量、定容量、希釈倍数、検量線の濃度範囲、検量線の測定範囲、検量線の測定点数、内標準物質の種類、内標準溶液の濃度及び内標準溶液の添加量は例示であり、より適切な試験を行うために試料の特性に合わせた柔軟な変更を可能とするよう、追記する、とした。

炭水化物の場合は、当該食品の質量から、たんぱく質、脂質、灰分及び水分量を除いて算出するが、アルコール及び有機酸を除くと明記されていない。一方、水分は、水分以外の揮発成分(アルコール類、酢酸等の揮発酸)が含まれる場合には、これらも水分として測り込まれるので、これらのものも別途に測定し、差引くことが必要である、と示されている。結果として、アルコール及び有機酸が含まれた値が炭水化物の量として表示されることになる。そのため、アルコール及び有機酸を比較的多く含む場合は、成分表2020年版(八訂)と取扱いを同一とし、炭水化物から差し引く成分とする、とした。ただし、アルコール類、酢酸等を含む食品の扱いが変わるため、導入する場合は、猶予期間を設ける等、その間に分析機関及び食品関連事業者に対し十分な説明を行う、としている。

また、糖質の栄養成分等の分析方法では、従前の栄養表示基準においては「炭水化物」又は「糖質及び食物繊維」のいずれかの表示であったが、食品表示基準においては、「糖質及び食物繊維」は「炭水化物」の内訳表示となっている。

このほか、きのこ類及び藻類の熱量計算については、食物繊維の表示が無い場合は0.5を乗じ、食物繊維の表示がある場合は、熱量の算出に当たっては糖質と食物繊維の総和を用いて計算することから、0.5を乗じない扱いとする、とし、ただし、食物繊維量を用いた計算を行ったうえで0.5を乗じた熱量を表示している食品が販売されていることを考慮し、猶予期間が必要である、としている。

なお、消費者庁では、「日本食品標準成分表が改訂され、新たな分析方法が採用されたこと等から、 栄養成分表示等に係る分析方法の整理を行うとともに、表記の修正等、所要の改正を行う」とする、食品表示基準の一部改正案の意見募集を10月27日~11月26日まで行っている。

表 日本食品標準成分表2020年版(八訂)で適用したエネルギー換算係数
注:*1 アミノ酸組成によるたんぱく質、脂肪酸のトリアシルグリセロール当量、利用可能炭水化物(単糖当量)の成 分値がない食品では、それぞれたんぱく質、脂質、差引き法による利用可能炭水化物の成分値を用いてエネルギー計算を行う。利用可能炭水化物(単糖当量)の成分値がある食品でも、水分を除く一般成分等の合計値と100 gから 水分を差引いた乾物値との比が一定の範囲に入らない食品の場合(資料 「エネルギーの計算方法」参照)には、利用可能炭水化物(単糖当量)に代えて、差引き法による利用可能炭水化物を用いてエネルギー計算をする。

*2   糖アルコール、有機酸のうち、収載値が1 g以上の食品がある化合物で、エネルギー換算係数を定めてある化合物については、当該化合物に適用するエネルギー換算係数を用いてエネルギー計算を行う。

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