森永乳業は和歌山県立医科大学との共同研究などから、ラクトフェリンが免疫細胞の一種であるプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)を活性化することを確認し、研究結果を12月6日~10日に中国・北京にてオンラインで開催された第15回国際ラクトフェリン会議にて発表した。
実験では、採取した血液からpDCや各種免疫細胞を含む単核球(PBMC)を分離し、ウイルス由来の遺伝物質がある場合とない場合の2つ条件下において、PBMC中のpDCの活性がラクトフェリン添加の有無でどのように変化するかを検討。 pDCの活性を3つの指標(CD86、HLA-DR、IFN-α)で評価した。
すると、ウイルス由来の遺伝物質がある条件下においては、pDCの活性化の指標は、いずれもラクトフェリンを添加することで有意に上昇した。ウイルス由来の遺伝物質がない条件下においては、CD86はラクトフェリンを添加することで有意に上昇したが、残る2つの指標は変化しなかった。
次に、pDC以外の免疫細胞の影響を排除して考えるため、PBMCから精製されたpDCを使用し、ウイルス由来の遺伝物質がある条件下においてpDCの活性がラクトフェリン添加の有無でどのように変化するかを検討した。pDCの活性を2つの指標(IFN-α/β)で評価したところ、いずれもラクトフェリンを添加することで有意に上昇した。
これらの結果より、ラクトフェリンがpDCを活性化し、その結果として幅広い免疫細胞を活性化している可能性が示唆された。ラクトフェリンによるpDCの活性化は、ウイルス由来の遺伝物質が存在する時に特に強く観察されたことから、免疫を適切に調節していることが推測された。
ラクトフェリンはこれまでの臨床試験から、呼吸器や胃腸などの様々な自覚症状を軽減することが報告されている。メカニズムとして、ラクトフェリンがNK細胞、T細胞、B細胞などの免疫細胞を活性化する可能性が考えられていた。血中にごく僅かに存在するpDCもこれらの免疫細胞を活性化することが知られているため、ラクトフェリンがpDCを活性化して、その結果として免疫細胞が活性化している可能性が考えられていた。今回の試験の結果は、ラクトフェリンの幅広い免疫調節作用を説明するメカニズムの1つと考えられている。