「食品と開発」2月号では、加工食品用酵素製品を紹介しています。各酵素製剤を取り扱い企業の製品や応用例などをまとめています。その中から今回は、IFFの製パン向け酵素について紹介します。パンは酵素を用いることで、老化抑制(やわらかさをしっかり保つ)により賞味期限延長に寄与し、食品ロス削減にも繋げられます。本誌ではほかにも酵素取り扱い企業を紹介しております。ぜひ本誌をご覧ください。
■賞味期限延長のための製菓・製パン向け酵素製品―IFF
IFFは、食パン、菓子パン、ケーキ(焼き菓子)の老化抑制・食感改良用途のマルトテトラオース生成アミラーゼ(G4酵素、G+酵素)製剤を紹介している。特に菓子パンなど糖を多く含む生地は従来の老化抑制酵素(マルトース生成アミラーゼ(G2酵素))が効果を発揮しにくく、また、ケーキにはこれまで老化抑制酵素を使う習慣がなかったが、これらの分野に新たに提案を行い、老化抑制による賞味期限延長と、賞味期限日までやわらかさやしっとり感を保つことで廃棄ロス削減に繋げられるようになった。
「POWERFresh® Special」は高糖系のパン・菓子パン向けで、柔らかさ、復元性、しっとり感を維持し、賞味期限を延長することができる。従来の老化抑制酵素が活躍しにくかった分野であり、採用が徐々に進んできている。「POWERSoft® Cake」はケーキ及び菓子パンに使え、やわらかさ、しっとり感に加え復元性も維持できる。また、ケーキの形状に影響を及ぼすことなく仕上げることができ、スライス性も向上するため、スライス時のボロケの発生が少なくなり、収率の改善も期待できる。計量しやすい添加量に調整されているため製造規模にかかわらず使いやすく、ケーキや菓子パンに浸透しつつある。
さらに、従来から幅広く使用されている老化抑制用途酵素のパフォーマンスをアップさせた複合製剤「POWERFresh® Breadシリーズ」も新たに揃えた。従来型の老化抑制酵素とG+酵素を最適なバランスで配合しており、食パンから菓子パンまで幅広く活用できる。製パン用改良剤メーカーなどに提案し、既に実績も重ねている。
また同社では新たに、米粉パンや全粒粉パン、雑穀入りパンなどグルテン形成が弱い生地向けに極性脂質リパーゼ酵素製剤「POWERBake® 4080」と「POWERBake® 4100」の2製品を上市し、昨秋から紹介し始めている。本製品の添加により気泡膜を安定化させることでボリュームアップを実現することができ、更にG+酵素を始めとする老化抑制用途酵素と組み合わせることにより、形状改善と食感改良を同時にもたらすことも可能である。
グローバルで展開する同社は海外のアプリケーション例や原材料事情の知見を豊富に有し、海外のマーケティング状況などと共に顧客に情報提供できる点が強みである。さらに、それらをもとに幅広い製品ラインナップを駆使して、国内のラボで日本市場や原料事情に合わせた処方を組むことができ、焼成サンプルの提供のみならず製菓製パン試験、物性解析を始めとする各種分析も対応可能である。
同社は酵素製品が活躍できるケースとして、①原料価格の高騰に対応:酵素製品を使うことで生地物性改良による操作性の改善とコストの最適化に寄与、②新鮮さの保持:老化抑制機能でSDGsやフードロス削減に貢献、③手ごろ感とプレミアム感:2極化する価格帯に対応し、安くて美味しいパン作りに寄与、を3本柱として挙げ、酵素製品のさらなる利用提案と浸透を図っている。