三菱ケミカル(三菱ケミカルグループ)は、有胞子性乳酸菌「ヘンドリクシア・コアグランス(Heyndrickxia coagulans SANK70258)」※(以下H・コアグランス)の風邪様症状に対するヒト臨床試験を行い、H・コアグランスが風邪様症状を緩和させることを確認した。この研究成果は6月17日「Frontiers in Immunology」に掲載された。
※Heyndrickxia coagulans (ヘンドリクシア・コアグランス)
旧名:Weizmannia coagulans(ワイツマニア・コアグランス)、Bacillus coagulans(バチルス・コアグランス)
試験では、20歳以上~65歳未満の風邪様症状を呈しやすい被験者79人を対象に、H・コアグランスを10億個以上含むカプセルを摂取するグループ(H・コアグランス群39人) とプラセボ群(40人)に分けて8週間の介入試験を実施した。
試験期間中、風邪様症状のスコアを評価したところ、H・コアグランス群における鼻水、鼻づまり、くしゃみ、のどの痛みスコアがプラセボ群と比較して有意に低値を示し、それらの 累積発症日数についても有意に低値を示した。併せてH・コアグランス群では、ウイルス感染防御を統括的にコントロールしているとされるプラズマサイトイド樹状細胞(pDCの活性化、ナチュラルキラー細胞の活性化、唾液中の分泌型IgA量の増加も認められた。さらにH・コアグランス群では腸内酪酸濃度の増加に伴い、炎症が抑制されることも確認された。
これらのことから、H・コアグランスを摂取することによるpDCの活性化を介した統合的な免疫賦活作用、ならびに腸内の酪酸産生の亢進を介した過剰な炎症の抑制効果が、風邪様症状の緩和に寄与している可能性が推察された。
H・コアグランスは、一般的な乳酸菌とは異なり胞子を形成するため酸や熱に強く、菌が死滅せずに腸で発芽して増殖するという特性を有する。これまでに腸内環境改善効果、便通改善、肌機能の改善などの機能性が確認されている。
■論文情報
タイトル Heyndrickxia coagulans strain SANK70258 suppresses symptoms of upper respiratory tract infection via immune modulation: a randomized, double-blind, placebo-controlled, parallel-group, comparative study
著者:相田正典、外川直之、水山和之、青木由典、末廣祥平、坂本明穂、内田典芳、山田良一
雑誌名 Frontiers in Immunology
https://www.frontiersin.org/journals/immunology/articles/10.3389/fimmu.2024.1389920/full