三栄源エフ・エフ・アイは、冷菓の喫食中に知覚される食感の経時変化と「リッチ感」の関係を官能評価を用いて解析し、食感の「リッチ感」は、付着感に関する「ねっちり注1」と「さくい注2」、舌ざわりに関する「なめらか」と「シャリシャリ」、後口に関する「もったり」と「すっきり」といった食感要素で構成されることを明らかにしている。
冷菓は、口腔内の温度での融解や唾液との混和など飲み込むまでの過程での食感変化が他の食品よりも大きい。そのため、喫食中には固体としてのかたさや付着性に関する食感、含まれる空気や氷による食感、融解した後の液体としての食感など、多くの食感要素を感じているとし、冷菓の喫食時に感じられる食感の「リッチ感」に焦点をあてて検討した。
本研究では、乳脂肪分の異なる市販アイスクリームなどを対象に、8つの用語(かたい、さくい、シャリシャリ、すっきり、なめらか、ねっちり、ふんわり、もったり)を用いて喫食中に知覚される食感の経時変化と「リッチ感」の関係を調べることで、「リッチ感」の要素解析を実施。各試料について食感の「リッチ感」を線尺度で評価(0~100でスコア付け)するとともに、食感の経時変化を追跡するTDS法(質的経時変化測定法)により、喫食中の食感変化を評価した(図1)。
次に、各試料の食感の「リッチ感」のスコアを目的変数、TDSカーブから算出した各食感要素の曲線下面積(AUC;area under the curve )、さらに、概念が対となる食感要素どうしのAUCの差分(および絶対値)を説明変数として多変量解析を行うことで、「リッチ感」の推定式を得た(特許第7268217号)。その結果、食感の「リッチ感」は、付着感に関する「ねっちり」と「さくい」、舌ざわりに関する「なめらか」と「シャリシャリ」、後口に関する「もったり」と「すっきり」といった食感要素で構成されることが明らかとなった。また、冷菓用安定剤等の種類や添加量によって上記の食感要素をコントロールすることで、「リッチ感」を高められることが示された(図2)。この手法は、低脂質や低糖質の冷菓の食感改良にも応用できる、としている。
なお本研究注3は日本食品科学工学会 第71回大会にて、令和6年度の「論文賞」を受賞。同社では、冷菓に限らず、様々な加工食品における食感の評価や設計へ展開し、幅広い食感改良のソリューション開発とアプリケーション提案に取組んでいく、としている。
注1 ねっちり:歯で噛んだときに弾力や付着感がある、割れにくい、噛み切りにくい
注2 さくい:歯で噛んだときに弾力がない、割れやすい、噛み切りやすい
注3 論文タイトル:「Temporal Dominance of Sensations (TDS)法を用いたアイスクリーム類の食感の「リッチ感」解析」