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【主張】国民健康・栄養調査は必要か?

恒例の「国民健康・栄養調査」が先月下旬に公表された。戦後の栄養欠乏の時代にスタートした同調査(当初は「国民栄養調査」)は、食品の摂取状況から、三大栄養素や近年は微量栄養素の充足率などが示され、各自治体などが取り組むべき指標としてもその役割を果たしてきた。

しかし、最近ではビタミン、ミネラルなどの栄養素は足りているとし、取り扱うビタミンなども数種(それでも不足は顕著だが)と少ない。「栄養格差は健康格差」という重要な指摘にも、「格差」について一部言及はしているが、深掘りはしていない。

一方、朝日新聞は先月20日付で「ビタミンD欠乏の子、増加中」とする記事を紹介している。さまざまな幼児の発育上の問題が指摘されるビタミンD欠乏は5年で3 倍以上に増えていると。その原因として「過度な紫外線対策と不適切な食事」を挙げる。生活スタイルの変化が新たな欠乏を生み出している。葉酸などの議論も諸外国は活発だ。どちらの記事が国民に役立つ情報かは、明らかである。

同調査の分かりにくさは、各紙の同紹介記事にも及ぶ。同調査では「糖尿病有病者と糖尿病予備軍はいずれも約1,000万人と推計」「体格及び生活習慣に関する状況は、都道府県の上位群と下位群で有意な差」「受動喫煙の機会は”飲食店”が最も高く4 割超」「高齢者の女性における低栄養傾向の割合は、この10年間で有意に増加」などの結果を紹介している。

これを受けた、各紙の扱い(調査上オンラインが中心)の見出しは、日経では「糖尿病患者1,000万人」、朝日は「糖尿病の疑い、初めて1,000万人超える」、読売は「糖尿病、初の1,000万人、高齢化なども」と紹介している。これまでの資料に基づけば、糖尿病患者(治療を受けている者)は約320万人、それ以外で強く疑われる者を含め予備軍は約2,000万人と理解されてきた。糖尿病患者と、有病者や強く疑われる者、予備軍の区分も不明確で、混乱が生じかねない。

「糖尿病が強く疑われる者(有病者)が1,000万人に増加して、可能性を否定できない予備軍が連続して減少(或いは移行)し、1,000万人程度になった事」から、「それぞれ」と分けたのだろうが。日経の添付グラフでは糖尿病患者1,000万人、予備軍1,000万人と読める。

いずれにしても、国民の税金を使う以上、予防や健康増進に向けた行動変容を促すような実りある調査内容でないと、厚労省の予算消化のような調査では虚しい。

本記事は「健康産業新聞 1653号」に掲載。「健康産業新聞」(月2回発行/1号あたりの平均紙面数は約50頁)定期購読のお申し込みはこちら

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