2019年の健康食品市場は前年比0.2%減の1兆2,455億円。前年との差は20億円だった。全体で見れば微減だが、チャネル別の様相は異なる。伸長する通販と苦戦が続く訪販の差は、17年が約650億円、18年が970億円、19年が約1,180億円と年々拡大している。もち麦などのブームで1,000億円市場が見えていた食系チャネルは消費の冷え込みが直撃し、足踏み。消費者に身近な存在として最も高い伸び率となった薬系チャネルは、DgS各社が工夫を凝らした戦略で集客に成功、2,500億円市場が見えてきた。特保市場は前年比1.5%減の6,400億円。健康食品+特保の市場規模は1兆8,855億円で、前年比は0.6%減となる。
【チャネル別市場動向】
■通信販売
健康食品の通販市場は前年比1.1%増の5,128億円。伸び率は前年の3.5%増から鈍化した。市場では、楽天やAmazonなど大手モール系企業が牽引する動きが継続。テレビ通販も好調だ。一方で歴史のある中堅通販では苦戦する企業もある。日本通信販売協会のまとめでは、衣料品や化粧品などを含む18年度の通販市場規模は前年比8.3%増の8 兆1,800億円。20年連続の増加で、直近10年の平均成長率は7.1%となっている。
健康と食品懇話会が昨年4 月に明らかにした健食ユーザー対象の調査では、最も使用している購入チャネルは「インターネット通販」が45.3%で最多。前年調査より2.2ポイント増えた。ネット通販の利用は50~60代が最も多く、半数以上が利用している。
この傾向は総務省統計局がまとめている「家計消費状況調査」でも示されている。ネット通販に特化して22品目を調べている同調査では、世帯主の年齢階級別にみると、健康食品の支出額が最も多いのが50代。18年度支出額は前年度比23.4%増の8,921円に伸びた。健食ネット通販支出額2 位は40代で6,908円(前年度比19.4%増)、3 位は60代で6,750円(同23.6%増)。
なお同調査における健食支出は19年5 月まで16ヵ月連続の2 ケタ増を記録、まさに破竹の勢いが続いていたが、6 月に失速。7月に盛り返したが8 ~10月と3 ヵ月連続のマイナスとなり、停滞感が漂ってきた。「ネット通販」内でも変化は起きている。
通販協がまとめた「第26回全国通信販売利用実態調査報告書」では、スマホ等の携帯端末によるネット通販の利用が前年より3.9ポイント増えて57.9%に。一方パソコンによるネット通販は1.7ポイント減って45.2%となった。
報告書では、スマホ等の携帯端末による通販利用者が著しく増加、「その勢いはさらに加速し、幅広い世代に浸透している」と指摘する。通販は生活者にとって重要なインフラとなった一方で、企業の悩みの種は配送料の値上げだ。今後、在宅を問わない「置き配」がどこまで浸透するかが注目されている。
■訪販等
訪販等(訪問販売・MLM、配置薬、宣伝講習販売)チャネルの健食市場規模は前年比3.7%減の3,950億円となり、4,000億円を割り込んだ。訪問販売・MLMは同4.0%減の3,235億円。日本訪問販売協会のまとめでは、2018年度の訪販全体の売上高は速報値で1兆7,032億円(前年度比1.2%減)。
会員の高齢化や、特定商取引法など規制強化が影響を及ぼした。こうした中、米国で人気のカンナビジオール(CBD)を活用し、外資系MLM企業が続々と日本市場に参入。CBDは米国での規制強化など気になる動きもあるが、今後のMLM市場で期待の星となっている。縮小が続く配置薬チャネルの健食市場規模は409億円(同2.6%減)。宣伝講習販売チャネルは306億円(同1.3%減)となった。
■薬系
薬系チャネルの健食市場規模は前年4.1%増の2,447億円。中国E C 法によるまとめ買いの減少や自然災害による影響を受けたが、各社の来店頻度を高める取り組みが奏功した。商材では青汁やビタミン・ミネラルなどの定番系に加えて、プロテインも売れ筋となった。
日本チェーンドラッグストア協会のまとめでは、2018年度のDgS全体の売上高は前年比6.2%増の7 兆2,744億円。総店舗数は2 万を超えた。経済産業省の「商業動態統計」によると、DgS における2019年1 ~10月の健康食品販売額は1,875億円で、前年同期比3.3%増。店舗数の増加が背景にあるほか、軽減税率の対象でありながら9 月に“駆け込み需要”が発生したことも数字を押し上げた。先の健食懇調査では、健食ユーザーで薬局・D g S の利用率が最も高い年代は20代だ。
利用率は48.8%に上り、年齢が上がるにつれて利用率は減少している。D g S の活用が進むのは、経産省統計で全体売上の約3 割を占める「食品」による集客効果が大きい。さらに各社はただ商品を並べるだけではなく、店頭での健康栄養相談会の実施や、専用アプリの提供など、来店頻度を高める施策を展開し、消費者の囲い込みを推進している。
自然食品店などの食系チャネルの健食市場規模は前年比2.6%減の930億円。18年の「エゴマ油」「もち麦」「サバ缶」など、ブームとなるような目立った商材がみられず、消費者の節約志向が追い打ちをかけた。オーガニック食品売場はじわじわと拡大。オーガニック中心に舵を切る企業もみられる。
このほか最近注目されているのが、植物由来の「プラントベース」。“植物オンリー”ではなく、ライフスタイルに応じて植物由来を選択するニーズに対応する。米国ではすでにムーブメントになっており、2020年注目トレンドの1 つになっている。
■食系
自然食品店などの食系チャネルの健食市場規模は前年比2.6%減の930億円。18年の「エゴマ油」「もち麦」「サバ缶」など、ブームとなるような目立った商材がみられず、消費者の節約志向が追い打ちをかけた。オーガニック食品売場はじわじわと拡大。オーガニック中心に舵を切る企業もみられる。
このほか最近注目されているのが、植物由来の「プラントベース」。“植物オンリー”ではなく、ライフスタイルに応じて植物由来を選択するニーズに対応する。米国ではすでにムーブメントになっており、2020年注目トレンドの1 つになっている。
【2020年の展望】
健康食品はどのくらい消費者に利用されているのか。国の統計でこれが明らかにされる。厚労省は「国民生活基礎調査」の調査事項を変更し、19年はサプリメント剤型の健康食品の摂取状況を調査。結果は今年7 月に公表される予定だ。国民への浸透度合いによっては、法制化を含めた新たな議論が巻き起こるかもしれない。
5 年目を迎えた機能性表示食品については、「増えるのは受理数だけ」という冷めた見方もある。大々的なP Rが可能な大手企業では好調な売れ行きの商品も見られるが、本紙の健食受託製造企業調査でも、「機能性表示食品であることが販売に直結しているかが不明」との声が聞かれた。受託企業で制度を評価する割合は年々低下、19年12月調査では30%にとどまった。
本記事の続きは「健康産業新聞1683号」に掲載。「健康産業新聞」(月2回発行/1号あたりの平均紙面数は約50頁)定期購読のお申し込みはこちら
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